2016 Fiscal Year Annual Research Report
マニラにおける貧困世帯と災害:再定住地の共同性の再構築に関する研究
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16J01842
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西尾 善太 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 災害 / 再定住地 / 実践 / マニラ / 都市 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は二度のフィールド調査をおこなった。その結果、災害管理の展開を起点しながらも、移住する人々が再定住へとひきつけられる動機とその語り、移住先での実践、人々のミクロな体験から再定住の意味と意義が明らかとなった。つまり、資本や社会的権力だけが都市空間や再定住地を開発するのではなく、再移住する人々による認識、経験、新たな日常生活のなかで、空間の意味や性質は付与され、再定位される。資本や権力によってのみ構築される空間も、またそうした権力からまったく逸脱した生活空間も存在せず、双方の絡みあうなかで空間は生成している。この視角を保持しつつ、資本集積による都市開発と住民のローカルな経験や実践を対極にとらえるのではなく、両者の相互作用の展開に着目することで、再定住地の重層的な空間として生成される過程を明らかにし、災害を契機とする都市変容の可能性を議論した。
1. 平成28年6月に開催された東南アジア学会で発表報告をおこない、多くのコメントをいただき、本研究をより大きな視座のもとで展開することが可能となった。 2. 平成28年7月に開催されたフィリピンでの国際大会で多くのフィリピン人研究者をまえに発表報告をおこなった。多くの建設的な意見とフィリピン人研究者とのネットワークが構築され、今後、共同研究をおこなうことも可能となった。 3. 上記二つの研究発表をとおして得た知見を反映し、学会誌に論文を投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度では、二度のフィールド調査を行い、平成29年度よりおこなう本調査のための受入機関の確定、調査地での信頼関係の構築をすすめることができた。また、国内学会・国際大会での発表をおこない、論文投稿への準備も進展しているためおおむね順調であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は長期フィールド調査をおこなう。それに際し、フィリピン大学・第三世界研究所に所属し、歴史研究者として著名なRicardo Jose氏に受入研究者になっていただく。Ricardo氏のマニラにおける歴史研究の視座から助言をいただき、都市における災害と復興を主題とした本研究の意義にかんしてより多義的な検討が可能となる。この知見を活かし、より広い視角を持ったフィールド調査の実施が期待できる。 また7月に開催される国際大会で研究報告をおこなう。28年度に学会誌に投稿した論文の掲載を目指す。
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