2017 Fiscal Year Annual Research Report
マニラにおける貧困世帯と災害:再定住地の共同性の再構築に関する研究
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16J01842
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西尾 善太 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 災害 / 都市 / スラム / 再定住地 / 郊外 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、マニラ首都圏における災害管理事業の展開がもたらすスラム地区住民の郊外への立ち退きについて、半年間のフィールド調査を行った。マニラ首都圏を含む発展途上国の都市では、民間セクターが政府と共同し、都心部の貧困層を郊外の社会住宅へと移住させる事例が数多くみられている。とりわけ、大規模な災害の後に、このような変化が推し進められ、貧困世帯が使用してきた土地を収奪することで資本蓄積と空間の再編が生じており、主に人文地理学を中心に研究が蓄積されてきた。 一方で、郊外へ移住する貧困世帯の研究は少なく、移住世帯の日常的な実践が生活空間を再編させる側面や、出自を別にする人々の間で構築される相互扶助行為がコミュニティへと展開する過程は十分に論じられてこなかった。平成29年度の調査では、この郊外における再定住地の再構築過程に着目をし、インタビュー調査をおこなった。 また、郊外における再定住地の存在が、マニラ首都圏を対象とした先行研究のフレームワークから抜け落ちている側面を、他のグローバルサウスの都市研究と比較するなかで明らかにすることができた。マニラ首都圏の都市周縁地域の変容は、これまでの研究では1)農地から工業団地への変化、2)農地からゲート付き分譲住宅への変化、だけを対象化し、都心から移住させられる再定住地を都市変容の要因として扱ってこなかった。これは、マニラ首都圏を対象とする都市研究が等閑視してきた「再定住地の実践」にかんする研究は、より広範囲において都市空間の再編へと連続するフレームを設定することができなかったことに起因してきたためといえるだろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の調査をとおして、災害管理事業、あるいは移住世帯の復興といった側面に加えて、都市研究として移住する再定住地がいかなる位置付けなのか、膨大な郊外研究を参照するなかで気づくことができた。これは、本研究が目指す都市研究と災害研究の架橋する目的をより現実的なものとして思考することを可能にした。 半年間のフィールド調査から詳細なデータも増えた。平成30年度の調査を踏まえ、今後に向けて、よりまとまった研究成果を提出できると考えるからである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、4ヶ月の追加フィールド調査をおこなう。この調査を踏まえ、博士論文を執筆し提出する。 博論執筆に加え、論文を二本投稿する。一本は、再定住地をめぐる郊外化について、もう一本は、再定住地内部の日常生活に関する詳細なフィールド調査によるデータを用いた移住世帯の実践についてである。調査内容的にも英語での投稿が望ましく、博士論文の執筆とできる限り同時に進行できるよう努める。
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