2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16J01970
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
木越 宣正 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | カチオン重合 / ビニルエーテル / シッフ塩基配位子 / 金属錯体触媒 / ハメット則 / 構造活性相関 / バルク重合 / 立体選択性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,金属錯体触媒の設計に基づく精密制御カチオン重合系の構築である。平成28年度は,シッフ塩基配位子と金属塩化物と組み合わせた開始剤系を用いてカチオン重合の検討を行い,(1)ハメット則に基づく触媒活性の定量評価,(2)置換基効果を利用した制御バルク重合系の構築,(3)中心金属や配位子構造が重合挙動に及ぼす影響,に関する検討を行った。 (1)種々の置換基を有するシッフ塩基配位子を1H, 13C NMRにより測定し,ハメットの置換基定数に対してプロットすることで,直線相関を得た。続いて,種々のシッフ塩基配位子とZrCl4を組み合わせて,酢酸エチル存在下,イソブチルビニルエーテル(IBVE)のカチオン重合を行った。重合結果から,それぞれの見かけの重合速度を算出し,置換基定数に対してプロットすると,正の傾きを有する曲線相関が得られた。また,重合のモデル系の1H NMR解析の結果から,酢酸エチルが相関関係に影響していると示唆された。(2)置換基効果による触媒の活性調節を利用し,種々のVE類を用いてバルク重合を検討した。電子供与性基を導入した温和な触媒活性の錯体を用いてIBVEのバルク重合を行うと,比較的狭い分子量分布を有するポリマーが生成し,制御バルク重合が進行することがわかった。(3)TiCl4と配位子を組み合わせ,酢酸エチル非存在下,低温条件でIBVEの重合を検討すると,制御重合が進行した。生成ポリマーのメソ二連子の割合は,配位子を用いない系よりも低く,配位子を用いたことで対アニオン側からの付加が比較的有利になった可能性がある。また,メソ二連子の割合が配位子構造によっても変化した。また,配位子内にエーテル部位を導入した配位子とZrCl4を組み合わせ,IBVEの重合を検討すると,類似の配位子を用いた場合よりも重合速度が遅く,その減速効果はエーテル部位の構造に依存した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究概要に記した様に,本年度の主な結果は,(1)基礎検討として,カチオン重合における錯体構造と触媒活性の相関関係を示し,(2)これを応用して,制御バルク重合に展開した。さらに,(3)次年度の検討の基盤となる,種々の中心金属を用いた錯体触媒系の開発へ向けた検討に着手し,錯体構造が立体選択性に影響し得ることを示した。また,上記の研究結果に加えて,(i)本開始系を用いたp-メトキシスチレンの制御重合を達成し,本系のモノマー適用範囲を拡大するとともに,次年度に予定しているビニルエーテル類とスチレン類の共重合に適していると考えられる条件を見出した。さらに,(ii)米国ミシガン大学に三ヶ月間の留学を行い,抗菌材料の開発を行った。この研究過程で,亜鉛を中心金属とした種々と構造を有するピリジンイミン錯体の合成を行った。ハロゲン化亜鉛は古くからカチオン重合触媒に用いられており,これらの亜鉛錯体をカチオン重合系に適用することは興味深く,またこれまでの触媒系との比較から,新たな知見が得られる可能性がある。 以上の様な点から,本研究課題の達成度に関して,「当初の計画以上に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果を踏まえ,平成29年度では,(a)錯体構造が共重合系におけるモノマー選択性に及ぼす影響,(b)錯体構造と触媒活性相関の厳密な議論,(c)錯体構造が立体選択性に与える影響,について検討する。 (a)では,錯体の性質や触媒反応場が,ビニルエーテル類及びスチレン類の選択的共重合系におけるモノマー選択性に与える影響及び機構に関して議論を行う。上記(i)において,スチレン類の制御重合条件が明らかになっており,同様の反応条件を用いて共重合の検討を行う。(b)では,酢酸エチル非存在下で検討を行うことで,より厳密な構造活性相関の議論を行う。この検討は,上記(3)から見出された,酢酸エチル非存在下,制御カチオン重合が進行するTi系を用いることで達成可能と期待される。(c)では,種々の置換基や構造を有する錯体触媒を用いて重合を検討し,錯体骨格や電子状態,嵩高さが立体選択性に及ぼす影響を系統的に調べ,議論を行う。上記(3)のTi系において立体選択性の変化が見られていることから,カチオン重合における立体選択性の発現に関する知見が得られる可能性が大いにある。
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Research Products
(4 results)