2017 Fiscal Year Annual Research Report
デマンド型交通の運行形式に着目した都市内交通の最適化に関する研究
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16J02064
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
長谷川 大輔 筑波大学, システム情報工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 都市計画 / 地域公共交通 / デマンド型交通 / 運行効率性 / 需要密度・分布 / トランスポーテーションギャップ |
Outline of Annual Research Achievements |
[Ⅰ] デマンド型交通の導入・廃止に関する現状把握:全国市町村の地域公共交通調査:各市町村のWebサイトをベースに調査を行い,地域公共交通の実態をwebでの情報を中心に調査し,以前調査した2011年度からの差分や海外の事例なども含め把握する.本年度は47都道府県1718自治体の調査を完了した.その結果2011年と比較し,デマンド型交通は287件の新規導入,20件の廃止自治体が確認された. [Ⅱ] 交通手段の空間的・時間的制約の違いと需要パターンの関係性に関する理論的検証:需要密度・平均移動距離の異なる条件の都市で,アクセス移動,イグレス移動の有無で分類した出向型交通と出迎型交通および自家用車の優劣を決定するモデルを構築し,低需要密度で出迎型交通の優位性があるものの,需要増加に対してコストが逓増的である点,各交通サービスの有利となる条件と自治体別の値との比較を行い,路線型・デマンド型交通導入地域におけるモデルの適合性を部分的に確認される点などを示した.上記の分析結果は1件の査読論文投稿,1件の国外学会にて発表した. [Ⅲ] 採算性制約を導入したデマンド型交通システムのシミュレーション分析:実際の都市の地理的データ,公共交通運行データを用い,各交通サービスの比較,あるいはベストミックスの状態を分析する.本年度は第一に,茨城県神栖市を対象にデマンドタクシーのゾーニング戦略の違いによる利用者の所要時間,車両走行距離への影響を分析した.第二に,モバイル空間統計を用いて短距離移動のODフローを推計し,数理計画モデルによって獲得ODフローの最大化,あるいは経路長最小化を実現する路線の構築を行った.また,このモデルと配車経路問題を組み合わせた,バス路線の提供レベルの違いによるデマンドタクシーの運行効率性への影響を求めた.以上分析結果を1件の英文査読論文投稿,2件の国内学会にて発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
[Ⅰ] デマンド型交通の導入・廃止に関する現状把握:全国市町村の地域公共交通調査: 各市町村のWebサイトをベースに自治体が主体となって運行する地域公共交通手段の調査を行い,47都道府県の調査を完了した. [Ⅱ] 交通手段の空間的・時間的制約の違いと需要パターンの関係性に関する理論的検証: 需要密度・利用者の平均移動距離と,アクセス移動,イグレス移動の有無で分類した出向型交通(バス)と出迎型交通(乗合タクシー),二つの交通手段の優劣を決定するモデルを構築した.それを用い,各交通手段のコストに関する基本的特性,需要密度低需要密度で出迎型交通の優位性があるものの,需要増加に対してコストが逓増的である点,各交通サービスの有利となる条件と自治体別に求めた需要密度・平均移動距離から求めたコストによって,市町村別に優位となる交通手段を示した. [Ⅲ] 採算性制約を導入したデマンド型交通システムのシミュレーション分析: 第一に,人口・施設分布をもとに,MCMC法に基づく需要発生プログラムを作成し,超小型モビリティ導入による中心市街地回遊性の比較や,後述する運行シミュレーションに活用している.第二に,デマンドタクシーの運行方法の違いによる利用者利便性・車両走行距離への影響を分析するため,茨城県常総市を対象とした車両台数・容量の変化による影響,神栖市を対象とした運行エリアのゾーニング戦略の変化による影響を運行シミュレーションによって検証し,最もバランスの良い案を示した.第三に,バスとデマンド交通の提供バランスの検討を行うため,運行シミュレーションによって路線案を所与としたデマンドタクシーの運行効率性向上の評価を行った.また,数理計画モデルによってODフローの獲得を最大化する路線の構築を行い,提供レベル別に効率的な路線網案の提示,デマンドタクシーと組み合わせた際の運行効率性向上の評価を行った.
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Strategy for Future Research Activity |
[Ⅰ] デマンド型交通の導入・廃止に関する現状把握:全国市町村の地域公共交通調査:調査実績から明らかとなった,2011年より導入状態に変化のあった自治体についての整理を行い,[Ⅱ]でのモデル結果との比較を行う.また,調査結果をweb上にて公開することも検討する. [Ⅱ] 交通手段の空間的・時間的制約の違いと需要パターンの関係性に関する理論的検証:構築したモデルで用いるパラメータの妥当性を検討し,[Ⅰ]の調査結果との比較・分析を進める. [Ⅲ] 採算性制約を導入したデマンド型交通システムのシミュレーション分析:[Ⅱ]で求められた,優位性が異なるいくつかの地域を対象として,DRTとFRTの提供バランスの比較を行う. また,これまでの研究成果の有機的統合を行い,博士論文として執筆する.
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