2016 Fiscal Year Annual Research Report
原子間力顕微鏡による再生医療培養組織の力学特性解析
Project/Area Number |
16J02087
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
田中 良昌 北海道大学, 情報科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 原子間力顕微鏡 / レオロジー / 細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、組織の広範囲にわたる高速レオロジー測定を可能にする原子間力顕微鏡法(AFM)を開発し、移植用培養組織モデルにおける、力学測定と分子生物学的な手法による機能解析との相関関係を明らかにすることである。 今年度は始めに、従来のXY粗動スキャナはノイズレスでの測定に時間を要するため、微動と粗動を組み合わせる測定システムを導入した。微動でマッピングを行った後に、粗動で隣接する領域に移動させてマッピング測定を行うことで、広範囲でのマッピング測定を粗動のみを用いた時よりも高速で行うことが可能になった。 次に、一つずつ周波数を変えて測定する周波数掃引法よりも高速で測定が可能な、多重周波数同時測定法の構築を行った。カンチレバーを振動させた際の位相と振幅の周波数特性を測定し、安定して測定が可能な周波数を調べ、その中で、倍波の影響で互いに影響を与えない組み合わせの周波数を測定周波数とした。そして3T3やHepG2といった培養細胞のレオロジー測定を行い、先行研究の報告と同様に、細胞の貯蔵弾性率と損失弾性率はPower-law structural damping モデルに合致することを確認した。 移植用培養組織モデルにおける、レオロジー測定と分子生物学的手法による機能解析の相関を調べる実験を構築するための最初の段階として、培養細胞を用いて物性と機能の相関を調べる実験系の構築を行った。細胞には、肝がん由来の培養細胞であるHepG2を用い、単一細胞レベルでの測定を行った。レオロジー測定を完了した後に、肝細胞で合成されタンパク質であるアルブミンを免疫蛍光染色し、レオロジー測定を行った細胞と同一の細胞を蛍光観察した。同一の細胞のレオロジー特性とアルブミン染色輝度を対応付けることに成功し、培養細胞においては明確な相関は見られないという結果が得られた。本結果は、第54回生物物理学会で発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、長広範囲かつ高速でレオロジー測定が可能なAFMシステムの構築のために、XY粗動スキャナと微動スキャナを組み合わせたスキャンシステムの構築、そして、多重周波数同時測定法の導入を計画していた。実際に、これらのシステムを導入し、それによる細胞の力学測定を行うことに成功したため、概ね研究は順調に進展していると言える。一方で、構築したこの測定系をどこまで高速化できるかの検討が課題として残っているため、次年度に検討を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、測定システムの構築が完了したが、測定のさらなる高速化に関する検討が課題である。測定をさらに高速化するために、モジュレーションの時間を短くすること、スキャナの移動速度を上げることが必要であるが、一方で精度が失われる可能性もある。そこで、高速化に伴って、測定の精度がどのように変わるかを調べることで、どこまで高速化が可能かを明らかにする。また、高速化に伴う精度減少が何に依存するかを明らかにし、その改善方法も検討する。これにより、細胞集団や組織の超広範囲マッピング測定のさらなる高速化を可能にする。そして、今年度検討した分子生物学的手法による機能解析と力学特性解析の組み合わせを基礎として、ラットのプライマリー肝細胞を用いた組織モデルに対して、それぞれの手法による解析結果の関係を明らかにしていく予定である。
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