2016 Fiscal Year Annual Research Report
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16J02130
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
田中 優作 北海道大学, 大学院理学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 人工衛星GRACE / 地震時重力変化 / 地震後重力変化 / 地殻変動 / アフタースリップ / 粘弾性緩和 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度において,本研究の目的の一つ「地震の『メカニズム』(正断層・逆断層・横ずれ断層)や『深さ』(浅発地震・やや深発地震・深発地震)、『発生場所』(陸域・海域)に応じ、重力が、特に『地震時』と『地震後』にどのように変化し、それらが人工衛星からどのように観測されるのか明らかにしていく」は,おおよそ達成された. 巨大地震に伴う重力変化を観測可能な人工衛星GRACEが打ち上げられた2002年以降に発生した複数の巨大地震について,見出された地震時や地震後の重力変化について,体系的に整理して総合報告として地震学会誌に投稿し,出版された.現在,重力観測衛星GRACEが運用を停止しつつあり,その後継機GRACE-FOが打ち上げられつつある.この総合報告は,そんな現在までの地震に関する成果を良く纏めた第一の論文である.またGRACE衛星のデータ解析に関しても日本語で詳しく述べられているため,「欧米や中国に比べてGRACE衛星を用いた研究を行う研究者が非常に少ない」という日本の状況を改善する一助になりうる. 更に、2004年スマトラーアンダマン地震の地震後重力変化が終息しつつあることを見出し、それに関連して地震間の重力変化についての研究のスタートラインについた。 また,「地震に伴う重力変化の体系的整理を行う」とした研究計画に沿って,私は博士論文の執筆に際し,この総合報告の内容を網羅し,更にこれまでの私の成果について英語で詳細に述べた.この論文はインターネット上で閲覧可能である. 最後に,研究計画で述べた「博士号取得後は外国の研究機関も訪問しながら研究を行う予定なので、その打合せも行う」も三月に行なった.平成29年度の研究を進めるための準備にも取り掛かることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の研究計画は,[1]書籍を購入し様々な手法を学び,より多くの地震に伴う重力変化のシグナルを検出することを試みる,[2]その成果を5つの学会で報告する,[3]研究が纏まれば論文として投稿する,[4]博士論文を執筆する,[5]平成29年度の研究の準備を行う,というものである.研究費の関係から[1]と[2]は部分的に断念せざるを得ず,手法の習得は限られた書籍で行い,学会は1つしか参加できなかった.一方,[3]論文の投稿は,総合報告という形で想定していた以上に価値のある論文を世に出すことができ,[4]博士論文執筆と[5]平成29年度の研究準備は当初の想定以上に進行した.以上を総合的に判断し,私の研究は「おおむね順調に進展している」と考えた.
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Strategy for Future Research Activity |
私の研究は現在,おおむね順調に進行している.したがって平成29年度の研究計画は,研究計画調書で述べた「衛星重力観測データの扱いに長けた研究者が所属している台湾の中央研究院地球科学研究所を訪問し、現在所属している北海道大学と行き来しつつ、ノイズとなりうる様々な現象が引き起こす重力変化を定量的に見積もって研究を進める」という予定のままである.ただし研究費が限られていることから,研究計画調書の「世界中の学会や研究会に活発に参加する」は,「限られた学会や研究会を良く選んで参加する」に変更せざるを得ないだろう.
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