2016 Fiscal Year Annual Research Report
国際的な労働力移動の自由化が各国の経済成長・経済厚生に与える影響の理論分析
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16J02157
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
釈野 晃 東北大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 経済成長 / 移民 / 人的資本 / 公的年金制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、少子高齢化に伴い労働人口の減少が進行する先進国における他国からの移民労働者の受け入れの是非について、理論面からの評価を行うことを目的とする。特に、労働者の国家間の移動がもたらす地域文化の多様化と生産活動、知識伝播のプロセス、新たな知識の創出の関係について着目をしている。 平成28年度は主に、他国から移民労働者の受け入れを行う先進国の経済成長率と経済厚生水準の観点から理論モデルを用いた移民政策の分析に取り組んだ。具体的には、既存の人的資本蓄積による内生的な経済成長メカニズムと賦課方式公的年金政策を組み込んだ世代重複モデルを応用し、労働力移動の仕組みを導入した基本的な理論モデルの構築を行った。労働者受入国側の政府が決定する労働者受入確率によって、毎期一定数の移民が受入国に移動し永住することを仮定し、その上で、第一に、非技能労働者の移民の受け入れ、第二に、受け入れる移民の持つ技能に関して一定程度の資格要件を設定する技能労働者の受け入れ、の二つの政策分析を行った。 分析の結果、非技能労働者である移民の受け入れについて、生産活動に従事する現地生まれの労働者と移民労働者の間の代替性が高い状況では、移民受け入れ人数を低い水準に引き下げるような移民の規制が受入国出身の家計の厚生水準の観点から望ましいことが示された一方、技能を身に着けた移民労働者の受け入れが非技能労働者に比べより支持されることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
移民受入国の経済成長率、経済厚生水準という観点から最適な移民政策を求めるという当初の課題に対し、基本的な結果は平成28年度の研究活動によって得られている。しかし、地域文化の多様化という労働者の国家間の移動に伴う側面について基本モデルでは簡略化した形で取り扱っている。結果の頑健性を確認し本研究の応用可能性を拡張するという点で更に研究を進展させる必要があると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
現実のデータと既存の実証分析の結果を参考に、労働力の国家間移動に伴う地域の文化的な多様化と生産活動、知識伝播のプロセス、新たな知識の創出の関係を理論的に精緻化した上で、追加的に移民政策の分析を行う。同時に、研究成果を学会等で報告することにより理論モデルの拡張を行い、また、学術誌への投稿を行う予定である。
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