2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16J02171
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小田部 秀介 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 基本群スキーム / 有限平坦主束 / 本質的有限ベクトル束 |
Outline of Annual Research Achievements |
標数0の体上の固有代数多様体の上の半有限ベクトル束に付随する基本群スキームの研究を行った。昨年度まででキュネッツ公式は得られていたが、ホモトピー完全列に関して議論ができなかった。今年度前半、この問題に取り組み、結果として、固有正規代数曲線上の射影的Du Bois族に関して、上述の基本群スキームに付随するホモトピー完全系列を得た。この結果を加えた論文が、国際誌"Comm. Algebra"に受理され、掲載予定である。また、昨年度、上述の基本群スキームに付随して得られる副有限基本群スキームの表現に関して、代数曲線の場合に部分的な結果を得ていたが、表現の具体的な記述が明らかにできなかった。今年度前半でこの問題に取り組み、古典的なChevalley-Weil公式を用いて記述することができた。この結果を論文としてまとめ、2016年9月に国際誌"Proc. Indian Acad. Sci."に投稿し、2017年3月に同誌に受理された。 今年度後半から、正標数のアフィン代数曲線に関するAbhyankar予想を副有限基本群スキームの純非分離商に拡張する問題に取り組んだ。アフィン代数曲線の最大純非分離線形的簡約商を決定し、古典的なAbhyankar予想の類推から、予想される結論を立てた。この予想の根拠となる部分的な結果を得た。一つ目は、任意の冪零純非分離有限群スキームに関しては予想が正しいということである。二つ目は、任意の半単純単連結代数群のフロベニウス核がアフィン直線の副有限基本群スキームの有限商として現れるというものである。三つ目は、標数2の場合に、2次一般線形群のフロベニウス核が2点抜き射影直線の副有限基本群スキームの有限商として現れるというものである。特に二つ目の結果を得るために、ベルティニ型定理の純非分離類似を得た。以上の結果は現在、論文として準備しており、投稿予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
正標数の代数多様体の基本群スキームの構造を決定するためには、副有限基本群スキームの連結成分へのエタール基本群スキームの作用を明らかにする必要がある。[研究実績の概要]の前半で述べた結果は、この作用とChevalley-Weil公式との関係を示唆するものであり、この認識は正標数の基本群スキームの構造を研究する上で重要になってくると期待される。特にChevalley-Weil公式は歴史が古く、正標数の場合においても馴分岐被覆に対しては非常によく調べられているので、基本群スキームの研究への応用が強く期待できる。しかし、今年度は正標数の場合には、この方向で議論を進めることができなかった。来年度以降の課題である。 Abhyankar予想の純非分離類似は、幾何的基本群と副有限基本群スキームの差をガロアの逆問題の観点から明らかにしており、予想の成立が強く望まれる。また、予想が成立すれば、アフィン曲線の副有限基本群スキームの純非分離有限商全体のなす集合の情報量を完全に決定できたことになるため、副有限基本群スキームの情報量の決定のための大きな一歩になると期待できる。また予想の根拠を得る過程で証明したベルティニ型定理は、この問題とは独立に、一般の設定で述べられるものであるため、今後正標数の代数多様体の基本群スキームを研究する際に重要な道具になると期待できる。しかし、古典的なAbhyankar予想の場合に第一の躍進であった可解有限群に関する埋め込み問題の方法に関しては、より強い条件である冪零という仮定の下でしか、その手法を一般化することができなかった。来年度以降の課題である。 上述の理由により、本研究課題の進歩状況について「(2)おおむね順調に進展している。」と自己評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
まだまだ代数幾何学的な整備が必要であると認識しているため、これに取り組む予定である。特に、副有限基本群スキームの最大線形的簡約商の重要性を今年度認識するに至ったので、研究を進めたい。特に代数曲線の場合には、ある程度構造を明らかにしておきたい。エタール商については以前からよく知られている。純非分離商の決定は今年度できたので、一般の場合が残っている。すなわち、最大線形的簡約商の連結成分へのエタール商の作用を明らかにすれば良いのであるが、固有代数曲線の場合は、馴分岐被覆に関するChevalley-Weil公式で記述できると推測できるが、アフィン代数曲線の場合は、それでは記述できない部分が現れるため、もう少し議論が要すると思われる。 また有限純非分離主束を含めた一般の有限平坦主束に関する分岐理論の研究も進めたいと思っている。これは上述のAbhyankar予想の純非分離版の精密化への応用が期待される他、代数的基本群の研究において分岐理論が重要であったように開代数多様体の副有限基本群スキームの研究においても重要な道具になると期待されるためである。
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