2016 Fiscal Year Annual Research Report
ナチス・ドイツの対アジア文化政策の変遷――ナチ日本学の展開を軸として
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16J02337
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
清水 雅大 九州大学, 法学研究院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 国際法学 / 国際法秩序 / 立作太郎 / 日中戦争 / 日本学 / 鹿子木員信 / W.ドーナート / 日独相互認識 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016(平成28)年度の研究実績は以下の通りである。本研究課題は、戦間期・第二次世界大戦期の日独関係について、当該時期の両国間における思想・学術交流の側面からこれを描くことを目的としている。具体的には、多様な思想・学術領域の中でも、特にナチ・ドイツの日本学/日本におけるドイツ学を最初の手がかりとして、これに着目した研究を進めてきた。 研究代表者の受入研究機関である九州大学は、戦前の帝国大学時代から日独文化交流にも関連深く、同学附属図書館には当時から収集されていた日独思想交流に関する重要な文献史料が豊富に所蔵されている。そこで、研究代表者は本年度前半期において、これらの諸史料を収集・読解することを優先的な作業内容とした。これに加えて、同じく戦前期の日独思想交流を研究されてきた葉照子氏のご厚意により、氏が以前にドイツで収集されていた哲学者・鹿子木員信関連の史料を譲り受ける機会に恵まれ、九州大学で収集した史料とともに、整理・読解作業を進めた。これらの諸史料に基づいて、ナチ・ドイツの日本学者/戦前日本の国家主義的なドイツ学者たちを中心に、当時の日独相互認識の解明に向けた研究を進めた。 また、これらの作業が進展するなかで、研究代表者は当該時期の日本とドイツにおける国際法学に関する諸史料(同時代文献)も、九州大学法学部蔵書においてさらに豊富に所蔵されていることを新たに知った。そして、これが思想・学術交流の側面から日本とナチ・ドイツの関係性を読み解くことを目的とする本研究課題に資するところが大であると判断し、本年度後半以降、戦前日本の国際法学者(特に立作太郎)やナチ期ドイツの国際法学者における政治と国際法をめぐる議論に着目して、あわせて調査研究を進めた。 以上の研究成果の一部はすでに国内の学会・研究会において口頭発表を行い、かつ現在、それらに基づく学会誌への投稿論文を準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画においては、戦前期における日独間の思想・学術交流の研究を進めるうえで、そのアプローチはなおもナチ・ドイツの日本学/日本におけるドイツ学に限定されていた。もちろん、日独の相互認識を検討するために、このアプローチの意義も十分に認められ、かつ先行研究もいまだ限られている。 しかしながら、それだけではなく、九州大学所蔵資料の調査を通じて、当該時期の両国における国際法論に関する豊富な史料を入手することができたこと。そしてこれに伴って、1933年から1945年にかけての日独間の法的次元における関係性という新たな研究視点を発見できたことは、本研究課題を遂行するうえで極めて重要な意義がある。なお、この問題領域において関係史的に、かつ実証的に取り組まれた国内外の先行研究はなく、全くの未開拓のテーマである。さらに、これに加えて、研究代表者が所属する九州大学大学院法学研究院において、また受入研究者である熊野直樹教授からの法学の専門的知見に基づく具体的な指導を通じて、収集した国際法関連の諸史料を専門的見地から適切に扱う方法を学ぶ機会が得られたこと。これらによって研究の視野が大いに広げられるとともに、本研究課題をより多面的な視点から扱うことができるようになったことがその理由として挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2017(平成29)年度以降も、前年度からの作業を引き続き継続する予定である。というのも、本年度における九州大学のキャンパス移転の関係で、同学附属図書館に所蔵されている史料も順次、一時利用停止が見込まれること。かつそこでの本研究課題を遂行するうえで重要な基本資料の分量も膨大であり、こうした事情から早急な史料収集が求められるためである。 したがって、2017年度も前年度と同様に、九州大学を拠点として本研究課題を遂行することが、作業効率の観点からも最も合理的であり、史料収集・読解を主としつつ、これらを順次、研究ノートにまとめながら口頭発表および活字化の準備を進める。
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Research Products
(4 results)