2016 Fiscal Year Annual Research Report
非完備市場における最適化問題に対するラグランジュ乗数アプローチと平均-分散ヘッジ
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16J02354
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
吉田 直広 一橋大学, 大学院経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | ラグランジュ乗数アプローチ / 離散時間 / 平均-分散ヘッジ問題 / 分散最適マルチンゲール測度 / 平均-分散ポートフォリオ選択問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では最適ポートフォリオ選択問題におけるラグランジュ乗数アプローチと平均-分散ヘッジ問題について調べた。ラグランジュ乗数アプローチとは非完備市場モデルにおける最適化問題の解法の一つとして知られているものであり、また、平均-分散ヘッジ問題とは非完備市場モデルにおけるデリバティブ価格付け問題の一つである。今回の研究の内容は概ね二つに分けられる。まず一つ目の内容は次のようなものである。ラグランジュ乗数アプローチと平均-分散ヘッジ問題はともに非完備市場モデルにおける最適化問題であるという共通点があり、互いに関係性があると考えられる。今回の研究では、証券市場が有限モデルで表されている場合に平均-分散ヘッジ問題をラグランジュ乗数アプローチで解くことができた。ここで有限モデルとは、確率空間が有限集合である離散時間モデルのことである。また、それに付随して平均-分散ヘッジ問題の解が分散最適マルチンゲール測度で得られるという定理の有限モデルにおける見通しの良い証明を得た。次に二つ目の研究内容は、離散時間での平均-分散ヘッジ問題の解を用いて離散時間の平均-分散ポートフォリオ選択問題を解くというものである。ここで平均-分散ポートフォリオ選択問題とはポートフォリオの期末での期待値を一定以上に保ちながらその分散を最小化するという問題のことである。今回の研究では、平均-分散ポートフォリオ選択問題はデリバティブのペイオフが定数であるような平均-分散ヘッジ問題に帰着させられることがわかり、証券価格の成長率にある程度の仮定をおくとシンプルな平均-分散ポートフォリオ選択問題の解を得ることができた。さらにその解を解釈することで、最適戦略はある定数と現在のポートフォリオの価値との差を証券価格の成長率から定まるある確率変数で修正した金額を各期間に投資するというものであることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、主な目的であるところの平均-分散ヘッジ問題をラグランジュ乗数アプローチで解くということは有限モデルにおいて成功した。より一般的なモデルにおいて平均-分散ヘッジ問題をラグランジュ乗数アプローチで解くということには困難があるということが明らかになりつつあり、その点での成果はまだ得られていない。しかし、研究の中で離散時間の平均-分散ヘッジ問題についての結果を離散時間の平均-分散ポートフォリオ選択問題に応用できることに気づき、その方面である程度の成果を出すことができた。以上から、研究成果は順当に得られているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今までの研究で有限モデルにおいて平均-分散ヘッジ問題をラグランジュ乗数アプローチで解くことができたが、より一般的なモデルで同様の結果を得るために、各モデルにおける同値マルチンゲール測度全体の空間の正規直交系を特定する方法を研究する。また、今までの研究で得られた離散時間の平均-分散ポートフォリオ選択問題の解法を連続時間の拡散過程モデルにおける平均-分散ポートフォリオ選択問題に適用する方法を研究し、さらに、得られた最適戦略のパフォーマンスを他の最適性の基準から得られる戦略と比較することを考えている。
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Research Products
(5 results)