2016 Fiscal Year Annual Research Report
呼気中の反応性ガスを推進剤とした大電力無電極推進機の開発
Project/Area Number |
16J03045
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
石山 崇好 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 電気推進機 / 磁気ノズル / ヘリコン波プラズマ / 炭酸ガス |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は予定通り, 油拡散ポンプからターボ分子ポンプへ取り替えるために必要物品を購入し, 真空ポンプの換装を行った. ポンプ換装後に炭酸ガスで実験を行う予定だったが, 放電で発生する炭素の微粒子によるポンプの破損が予見されたので炭酸ガスでの実験は断念した. そのため予定を変更し, 実験は分子量44の炭酸ガスのプラズマ流を模擬するために分子量40の希ガスのアルゴンで行い, 炭酸ガスの放電反応は0次元反応モデルを構築し数値的に調べることにした. 大電力無電極推進機は, 電源に電力25kW, 動作周波数100 ~ 400 kHzのインバータ電源を用いており, その構造は高周波アンテナが巻きつけられた絶縁円筒管に磁気ノズルを重畳したもので, ヘリコンスラスタに類似の構造を持つ. 実験は本推進機で励起される高周波プラズマの基礎特性把握のために静電プローブと磁気プローブを利用してプラズマ諸量の測定を行い, また推進性能を評価するためにターゲット法で推力測定を行った. 実験の結果, 大電力化したことでプラズマの生成量, 推力, 比推力がそれぞれ上昇した. また, 生成されたプラズマの種類を同定するために磁気プローブを用いて変動磁場の軸方向及び径方向分布の測定を行った. 変動磁場測定の結果, kHz帯動作のインバータ電源を用いた場合でも適当な軸磁場が印加されればヘリコンプラズマが励起されることを確認した. 一方で, 20 mT以上の強い磁場をかけると変動磁場の振幅や推力電力比が外部軸磁場強度の上昇につれて下がっていく傾向が見られた. このことから, 100 ~ 400 kHzの間で動作するインバータ電源でプラズマを励起させる場合, 軸磁場強度の最適値は10 ~ 20 mT程度の値であることが分かった. 今後は, 今回得られた知見をもとに推進機を改良し, 性能向上を目指す予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述の通り, 当初炭酸ガスで実験を行う予定であったが, 実験装置保護のために, 分子量の近いアルゴンで実験を行うこととした. アルゴンでの実験の結果, 大電力化したことでプラズマの生成量, 推力, 比推力がそれぞれ上昇した. 加えて, 磁場測定と推力測定の結果から, 10 ~ 20 mTの間に外部軸磁場強度の最適値があることが分かった. 一方で, 推進効率は4 ~ 6 %程度と低い値を示した. これは投入電力のほとんどがプラズマの生成のみに使われ, 運動エネルギーとして取り出せていないことを示している. 13.56 MHzで動作する従来型のヘリコンスラスタの場合は, 磁気ノズルの強度を大きくすることで性能の改善を図っているが, 300 kHzで動作する本推進機の場合, 軸磁場強度の増大につれて性能が低下していくため, 生成と加速を同時に行う1段加速型の形では高性能化に不向きであることが予想される. 従って, 性能向上のためには, 生成部と加速部が独立した2段加速方式をとる必要が有ることが明らかとなり, 現在2段加速方式の新しい大電力推進機を開発中である.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は, 現在製作中の2段加速型の大電力推進機を用いて実験を行う. これまで行ってきた静電プローブによる生成量測定, 磁気プローブによる変動磁場計測に加えて, エネルギーアナライザーを用いて加速効率を測定し, 2段加速型大電力推進機の基礎特性の取得を行う. また, 推進機としての性能評価をするために推力測定も引き続き行う. 新型機の実験に加えて, 炭酸ガスの0次元放電モデルを完成させ, 炭酸ガスの放電の微視的な変化を追い, 効率的な炭酸ガスの電離手法を数値的に見つける.
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