2016 Fiscal Year Annual Research Report
メラニン凝集ホルモン神経の活動操作と運命制御を用いた生理的役割の解明
Project/Area Number |
16J03064
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
鈴木 暢 名古屋大学, 環境医学研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | メラニン凝集ホルモン神経 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究計画目標は、逆行性神経トレーサーを用いた視床下部-海馬神経ネットワークの探索であった。そこで、下記の2つの方法でこの課題に取り込んだ。 まず1つ目は、市販で売られている逆行性のレトロビーズを購入し、それを本プロジェクトの標的となる海馬(今回は背側海馬のCA1)領域に投与した。確かに、背側海馬のCA1へのレトロビーズ投与の実験では、視床下部から海馬領域への神経投射も確認され、標的としているMCH神経からも投射していた。しかしながらレトロビーズのインジェクションでは、幾ら少ない量を局所的に投与したとしても、本当にCA1領域のみの神経由来のシグナルなのか、はたまた、CA3領域の神経も含まれているのか、CA1領域のどの神経にビーズが取り込まれているか等、あまりクリアな実験とは言えなかった。 そこで研究者は本年度アデノ随伴ウイルス(AAV)を用いて、より特異的に神経ネットワークを明らかにしようと経トランスシナプストレーサーの作製に取り組んだ。1つはWGAを用いた順行性のシナプスとレーサー、もう1つはTTCを用いた逆行性シナプストレーサーである。これを作製することにより、本研究の最初の目的である視床下部外側野MCH神経が海馬のどの領域に投射しているのかをより詳細に明らかにできる。まず、コントロール実験として既に逆行性にワークすることが知られているCav2-Creウイルスを購入し、AAVウイルスと組み合わせてCre存在下でのたんぱく質発現が可能かどうかを確認した。反対側への投射が知られている運動野の片側にCav2-Creを、もう片側にCre存在下で蛍光タンパクが発現するAAVdj-CMV-FLEX-hrGFPをインジェクションし、hrGFPの発現を確認した。期待通り複数のウイルスを使用することで、目的の神経からの投射をより特異的に示すことが本年度の研究で明らかにされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
採用時一年目は主に逆行性神経トレーサーを用いた視床下部-海馬神経ネットワークの探索に必要なツール作成に尽力していた。逆行性トレーサーを用いた研究では、逆行性トレーサーを背側海馬のCA1領域にインジェクションし、視床下部MCH神経から背側海馬へのある程度の投射があることを確認することを目的として始めた。実際、市販されている逆行性トレーサーであるレトロビーズにより、視床下部のMCH神経から背側海馬のCA1領域に投射があることが観察された。 しかしながらレトロビーズのインジェクションでは、幾ら少ない量を局所的に投与したとしても、本当にCA1領域のみの神経由来のシグナルなのか、はたまた、CA3領域の神経も含まれているのか、CA1領域のどの神経にビーズが取り込まれているか等、あまりクリアな実験とは言えなかった。 そこで研究者は本年度アデノ随伴ウイルス(AAV)を用いて、より特異的に神経ネットワークを明らかにしようと経トランスシナプストレーサーの作製に取り組んだ。1つはWGAを用いた順行性のシナプスとレーサー、もう1つはTTCを用いた逆行性シナプストレーサーである。これを作製することにより、本研究の最初の目的である視床下部外側野MCH神経が海馬のどの領域に投射しているのかをより詳細に明らかにできる。 しかしながら、本年度、MCH神経特異的にCre-TTCやCre-WGA等を特異的に発現させ、投射先の細胞を検出するまでには至らなかった。これは、AAVベクターにより目的のタンパクを発現させることができても、順行性もしくは逆行性の輸送をコントロールするまでには至らなかったためである。そのため当初の目的であったMCH神経から海馬領域へのより詳細な投射領域の特定は未解明である。今後更なるAAVベクターの開発が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
摂食やエネルギー代謝の制御には多くのペプチドが関与し、MCHもその1つである。哺乳類のMCH神経は視床下部の外側野だけに細胞体が存在し、これまでにMCH神経は肥満に関与すると考えられてきた。一方で、ブタの脳から発見された脳由来神経栄養因子に(brain-derived neurotrophic factor, BDNF)も肥満との関わりが、遺伝子改変マウスのみならずヒトにおいても報告されている。BDNFが視床下部に発現することはこれまでに報告されているが、BDNFがどの神経細胞において、摂食やエネルギー代謝を制御しているかは不明である。そこで次年度は、テトラサイクリン発現誘導システムを用いてBDNF量を人為的に増加させることでMCH神経の活動を操作し、摂食やエネルギー代謝がどのように変化するのか明らかにする。 MCH 神経の活動操作には、MCH神経特異的にテトラサイクリントランスアクティベーター(tTA)タンパク質を発現するマウス(MCH-tTAマウス)を用いる。このマウスはすでに樹立済みである。また、tTA依存的にBDNFの遺伝子発現を操作するために、tetオペレーター配列(tetO配列)をBDNF遺伝子にノックインしたマウス(BDNF-tetOマウス)を使用する。BDNF遺伝子は9つの転写開始点をもち、exon 4から始まる転写が神経活動依存的に増加することが知られている。そこで我々は、exon 4にtetO配列をノックインしたBDNF-tetOマウスの作製した。tTAはドキシサイクリン(DOX)非存在下でtetO配列に結合し、下流の遺伝子の発現を誘導する。そこで本年度は、まずMCH-tTAマウスとBDNF-tetOマウスを交配する。そして得られるマウスが、DOX非存在下において、MCH神経にBDNFを過剰に発現しているか検討する。
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Research Products
(1 results)