2017 Fiscal Year Annual Research Report
導電性高分子-レドックス活性有機低分子複合体の作製と高容量蓄電デバイスへの応用
Project/Area Number |
16J03122
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
佐藤 宏亮 慶應義塾大学, 理工学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 導電性高分子 / 有機結晶 / ナノ材料 / 階層構造 / 蓄電デバイス / キャパシタ / 電極材料 / 酸化重合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、導電性高分子の形態制御に基づいて、酸化還元活性のある有機結晶との複合体を作製する手法を確立し、有機電極材料として応用することを目指すものである。従来、無機材料で構成されてきた電極材料を、低環境負荷な有機材料に置き換えることは、元素戦略に合致するものであり省資源化に寄与する。有機分子を電極材料として応用する際の課題として、低導電性および電解液への溶解が指摘されている。本研究の目的は、電子移動経路および溶出の抑制として機能する導電性高分子と酸化還元活性を有する有機低分子結晶との複合体をナノスケールで作製し、蓄電デバイスの電極としての応用可能性を示すことである。平成29年度の具体的な成果として、導電性高分子ポリピロールと、酸化還元活性のあるキノン誘導体の複合体について、どのような手法で、どのような構造を形成すれば、電気化学特性の向上に寄与するかを明らかにした。前年度まで、ホスト-ゲスト構造や海-島構造を有する、キノン誘導体の結晶が導電性高分子に囲まれた構造の複合体の作製に成功していた。これらに加え、反応性テンプレート法を用いて、キノン誘導体結晶に液相や気相からモノマーを供給することで、粒子集積構造の複合体、共連続な複合体やコア-シェル構造の複合体を得た。これらの複合体において、電気化学特性を横断的に比較した。作製した複合体のうち、重合と溶解の同時進行により作製される、階層構造を有する共連続構造複合体について、先行研究の最高値に匹敵する電気化学特性を発揮した。これは、導電性高分子相が連続であること、ナノスケールの複合と共存していることにより、電子の輸送や反応イオン種の輸送が円滑になったためと考えられる。以上の結果より、有機電極において階層的な構造の形成や、導電性高分子のマイクロメートルスケールでの連続性が、電気化学特性の向上に有効であることの提示ができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画の二年目における進捗状況は、当初の予定通りおおむね順調であった。当初の研究計画において、「導電性高分子-レドックス活性有機低分子複合体の形態・複合構造の制御による電気化学特性の向上」を二年目の目標としていた。実際の進捗として、ピロールと有機酸化剤結晶を気相や液相で合成する手法を開発し、粒子集積複合体や共連続複合体を作製することができた。複合体の構造と組成を、用いる有機酸化剤の溶解性や還元電位を変えることにより制御して作製可能であることが分かった。このような形態制御によって連続構造や階層構造を付与した電極において電気化学特性の向上が観測された。上記の成果は、1件の査読あり論文および2件の国内学会において発表された。以上をもって、計画の二年目の目標である「複合体の形態・複合構造の制御による電気化学特性の向上」を達成できたと判断した。加えて、当初の計画では、三年度目に予定していた「複合体の高機能化」について進捗があった。上記の電気化学特性の向上した複合体の構成材である、有機酸化剤を用いて重合・形態制御したポリピロールについて、従来の手法により作製されるものよりも特性が向上していることを見出した。より高機能の複合体を作製するためには、構成材料そのものの特性向上は基礎にあたる。上記に関する内容は1件の国際学会で発表され、論文をまもなく投稿予定である。総括として、平成29年度の進捗は、二年目に予定していた目標に到達したため、当初の計画どおり順調に進行していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、有機酸化剤により得られる導電性高分子の複合体への応用および分子設計による反応電位向上の二点を軸として、研究の展開を計画している。前者について、従来法の無機酸化剤により重合・形態制御した導電性高分子ではなく、有機酸化剤を用いて重合・形態制御した導電性高分子が良好な特性を有することが明らかになってきている。今後は、複合体の構成材として新規手法による導電性高分子を用いることで、特性の向上を図る。後者について、基礎的なベンゾキノン誘導体の分子のスクリーニングにより、その反応電位に応じて適する複合方法があることを見出した。今後は、より高い反応電位を有するベンゾキノン類の利用や、ポリピロールより高い導電性を有するポリチオフェン骨格を有する高分子材料の利用により、有機電極のバリエーションを広げていくことを計画している。
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