2016 Fiscal Year Annual Research Report
植物共生細菌の遺伝変異がもたらす自然選択と間接遺伝効果による森林生態系機能の制御
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16J03194
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鍵谷 進乃介 北海道大学, 環境科学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 共生相互作用 / 生態-進化動態 / 遺伝変異 / アクチノリザル植物 / 根粒共生 |
Outline of Annual Research Achievements |
生息域スケールにおける共生細菌の遺伝変異が寄主植物の表現形質の変異を生み出すことを検証するため、河畔林の構成樹種であるケヤマハンノキとその共生細菌である窒素固定細菌フランキアの共生系を用いて、フランキア野外集団の遺伝解析及び寄主樹木と共生細菌の異なる組合せによる共生実験を行った。 まず、生息域スケールにおけるフランキアの遺伝変異を明らかにするため、北海道大学の所有する雨龍研究林に生育するケヤマハンノキの稚樹211本から根粒を採取し、nifD-K遺伝スペーサー領域の塩基配列を読み取った。その結果、203株の塩基配列を読み取ることに成功した。得られた遺伝情報を基に、類似度98.0%を閾値として分類した。その結果、27個のグループに分類され、地域ごとに組成が異なることが分かった。このことから、先行研究で知られているより比較的狭い空間スケールの中でも、フランキアに遺伝変異があることが分かった。 続いて、生息域スケールにおけるフランキアの遺伝変異がケヤマハンノキの表現形質を変えうることを検証するため、共生操作実験を行った。上記で採取した根粒のうち、異なる遺伝子型をもつ根粒3つを単離培養した。次に、培養した各菌株を異なる母樹由来のケヤマハンノキ実生に接種し、ガラス温室内で栽培した。ケヤマハンノキの種子は、雨龍研究林内外に生育しているケヤマハンノキ12本から採取している。その結果、異なる母樹由来のハンノキと異なる遺伝子型のフランキアの組合せによって、ハンノキの成長が異なることがみられた。また、組合せによっては菌体を接種していない処理よりも成長が悪くなる場合もあった。以上の結果から、フランキアの遺伝変異が及ぼす効果はハンノキ集団ごとに正から負まで幅広く異なっていることが示唆された。このことから、共生する微生物の遺伝変異が植物の遺伝子基盤の表現形質の決定に重要であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画上で予定されていた通り、野外におけるフランキアの遺伝変異を明らかにし、その変異がハンノキの遺伝変異との組合せによって異なる影響を与える結果を得ることができた。また、当該年度に得られた結果に関して、国内の学会で2回発表した。加えて、国外の学会にも参加し、修士課程での研究を発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、共生細菌と寄主樹木の双方の遺伝変異の組合せによる昆虫群集への影響を検証するため、野外での圃場実験を行う。
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Research Products
(3 results)