2017 Fiscal Year Annual Research Report
植物共生細菌の遺伝変異がもたらす自然選択と間接遺伝効果による森林生態系機能の制御
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16J03194
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鍵谷 進乃介 北海道大学, 環境科学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 共生相互作用 / 生態-進化動態 / 遺伝的多様性 / アクチノリザル植物 / 根粒共生 |
Outline of Annual Research Achievements |
「共生細菌の間接遺伝効果が、寄主植物の表現形質の変異を介して、関連する昆虫群集構造や森林生態系機能を変えている」という仮説を全体の目的としている。それに対して、2017年度は以下の研究の進捗があった。(1) 寄主植物の遺伝的な変異が樹上性昆虫群集の予測に重要であることを野外調査と統計モデリングによって明らかにした成果について論文化し、オンライン上で公開された。(2) この研究で検出された樹木と昆虫群集間の相互作用に共生細菌の遺伝的変異がどのように寄与しているのかを明らかにするため、「野外環境下において、ホスト樹木と共生関係にある共生細菌の遺伝的多様性を明らかにすること」および「実際に共生関係にある共生細菌のホスト個体内における遺伝的組成によって、ホスト樹木の表現形質が異なるのかを検証すること」を目的として研究を進めた。以上の目的を達成するため、ケヤマハンノキ (Alnus hirsuta) とその共生細菌である窒素固定細菌フランキア (Frankia spp.) の共生系を対象として、共生細菌の野外集団のメタゲノム解析、そして、ケヤマハンノキの窒素同位体分析を行った。その結果、野外環境下においてケヤマハンノキは系統的に多様なフランキアと共生関係にあることを明らかにした。先行研究の多くでは、ホスト植物一個体と共生者1系統という一対一の共生関係に着目されていた。しかし、本研究によって、ホスト個体内には普遍的に系統的に異なる共生者が共生していることが、野外で示された。この結果は、植物-細菌共生系において、何故、野外では共生者の遺伝的多様性が高いのかという疑問を解決に導くだろう。今後は、ハンノキの窒素同位体比の解析も交え、フランキアの遺伝的組成がハンノキの表現形質に与える影響を検証していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
寄主植物の遺伝変異が樹上性昆虫群集の予測に重要であることを示した野外調査の成果を第一著者として論文発表をした。この投稿論文については、多くのwebニュースや新聞で取り上げてもらうことができた。寄主植物における共生細菌の遺伝的多様性に関する研究においては、メタゲノム解析と窒素同位体比の解析に初めて取り組んだが、大きな失敗もなく、順調に成果を示すことができた。2017年度の研究成果については、国内学会2回と国際学会1回、講演会2回で発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究から、寄主植物の遺伝変異によって昆虫群集が異なること、そして、その寄主植物は系統的に多様な共生者と共生関係にあることを明らかにしている。今後の研究では、共生者の系統的組成が寄主植物の表現形質の違いを介して昆虫に異なる影響を与えることを明らかにする。そのため、共生者の系統的組成が異なる寄主植物から葉を採取し、植食昆虫に摂食させる飼育実験を計画している。また、これまでに得られた研究成果について論文執筆を行う。
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