2016 Fiscal Year Annual Research Report
限定合理的な人々を含む環境におけるマッチング理論の構築
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16J03250
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
中田 里志 一橋大学, 大学院経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 安定マッチング / 限定合理性 / 耐戦略性 / 非期待効用 / 頑健性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は, 人々が必ずしも合理的な選好を持つとは限らない環境下において, 既存のマッチング問題の理論的成果が同様に成立し得るのか, そしてこのような環境下ではどのような新たな問題が発生するのかを明らかにし, 限定合理的な人々が存在する下でのマッチング理論を構築することを目的としている. これに即し, 本年度は選好の完備化と呼ばれる手法を用いて, (1)安定マッチングの存在, (2) 片側耐戦略性を満たすアルゴリズムの存在について明らかにした. 一般に, 完備化は具体的な構成方法までは知られていないが, マッチング問題で具体的に用いることのできるアルゴリズムの一例も与えた. また, この方法の限界と新たな問題として, 通常の合理的選好の下では起こりえない(3) 片側最適安定性と片側耐戦略性が両立しえないことが明らかになった.これらの結果は, 通常のマッチング問題を考える際の基本となる成果が, 限定合理的な人々が存在する環境下においてもどの程度成立しうるのかを示す基礎的な結果である. この他に, 限定合理性と関連性と関連し, 曖昧性を考慮した非期待効用の基礎的な研究及びその応用に関する研究を行った. 前者については, ショケ期待効用と呼ばるクラスとProbabilistic Sophisticationと呼ばれるクラスの両方を満たす意思決定者の公理的基礎づけを行った.後者については, 双子危機と呼ばれる金融危機に情報の曖昧さがどのような影響を与えるかについて, 及び, 人々の選好について不確実性がある中で, 最悪のケースを想定しても一定のパフォーマンスを示す投票ルールの特徴づけについての研究をそれぞれ行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は, 上述の通り, (1) 安定マッチングの存在, (2) 片側耐戦略性を満たすアルゴリズムの存在, (3) 完備化を用いたときに生じる片側最適安定性と片側耐戦略性との非両立性について明らかにした.
このような基本的な結果を得ることができたとともに, 一般的に片側最適安定性と片側耐戦略性を共に満たすメカニズムが, 限定合理的な人々が存在する環境下において存在しうるのかという新たな問題が見つかった.
以上のように, 重要な結果を示すと共にさらなる研究の方向性を見出した点において, おおむね順調に進行している.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究で発見した, 「片側最適安定性と片側耐戦略性を共に満たすメカニズムが, 限定合理的な人々が存在する環境下において存在しうるのかという新たな問題」という問題の解決を目指す.
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