2016 Fiscal Year Annual Research Report
栄養器官のデンプン合成制御による次世代型作物の作出に向けた分子基盤の確立
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16J03481
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
森田 隆太郎 神戸大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | デンプン生合成制御 / バイオエタノール / イネ / 稲わら / 転写因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
CO2 Responsive CCT Protein (CRCT) はイネの葉鞘・稈におけるデンプン生合成の転写制御因子である.本研究ではCRCTの分子機構の解明とCRCTを利用した作物の改良を目的としている.本年度は「CRCTの分子機能の解析」と「バイオエタノール生産効率とデンプン蓄積の品種間差に及ぼす効果」について研究を行った. 「CRCTの分子機能の解析」CRCTが相互作用するタンパク質を同定するため,CRCT-GFP融合タンパク質が発現する形質転換イネを作出したが,融合タンパク質の発現量が低くその後の免疫沈降-質量分析法に利用できなかった.一方で,CRCTは葉鞘においてデンプン合成酵素I, 枝作り酵素I, α-グルカンホスホリラーゼ1のタンパク質レベルでの発現量と活性レベルに影響を与え,さらには葉鞘のデンプンのアミロペクチンの構造やアミロース含量に影響を与えることがわかった. 「バイオエタノール生産効率とデンプン蓄積の品種間差に及ぼす効果」CRCT高発現イネの稲わらの組成の組成を解析したところ,非形質転換イネに比べデンプン含量が顕著に増加していた.稲わらを希硫酸による前処理を行ったところ,CRCT高発現イネでは酸可溶性画分に含まれるグルコース含量が非形質転換イネに比べ顕著に増加していた.また,CRCT高発現イネでは稲わらの乾物重も増加していた.一方で,酸不溶性残渣に含まれるセルロースの利用効率はCRCT高発現イネと非形質転換イネに差は認められなかった.以上の結果から,全体としてCRCTを利用しバイオエタノール生産効率が高いイネ品種の開発が可能であると考えられる.またCRCTがデンプン蓄積の品種間差に及ぼす効果を解析するため,栽培イネ6品種を栽培し,栄養成長期,出穂後0, 10, 20, 40日目に葉鞘をサンプリングした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「CRCTの分子機能の解析」では解析に利用できる形質転換イネが作出できておらず,今後計画の変更が必要である.一方で,CRCTが栄養器官のデンプン生合成に与える効果については多くの新しい知見が得られた.また,「稲わらを用いたバイオエタノール生産効率とデンプン蓄積の品種間差に及ぼす効果」については計画通りに解析が進んでいる.以上のことから,本研究課題は概ね順調に進行していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
CRCTと相互作用するタンパク質を同定するため,GFPよりも安定性の高いVenusを用いてCRCT-Venus融合タンパク質が発現する形質転換イネを作出する.また,イネcDNAライブラリーを用いたイーストツーハイブリット解析によりCRCTが相互作用するタンパク質の同定も行う.CRCTが結合する遺伝子を同定するため,これまでの研究で候補に上がった遺伝子のプロモーター領域を用いてゲルシフトアッセイを行う.CRCTが稲わらのデンプン蓄積に及ぼす効果を解析するため,本年度サンプリングした葉鞘を用いてCRCTの発現量とデンプン含量の関係を解析する.さらには,解析に用いたイネ6品種のCRCTのプロモーター領域と遺伝子領域のDNA配列を解析し,CRCTのアレルの探索を行う.
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