2016 Fiscal Year Annual Research Report
音響ビーコンで自己位置を推定する屋内移動ロボットシステム
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16J03531
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小木曽 里樹 筑波大学, グローバル教育院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | マイクロホンアレイ / 位置推定 / 移動ロボット |
Outline of Annual Research Achievements |
音響ビーコンを用いる移動ロボットの位置推定について、音響ビーコンの発する信号の種類及びパラメータが位置推定精度に与える影響について検討を行った。音響ビーコンの信号に求められる性質を、1.複数の音響ビーコンから発せられる信号は互いに区別が可能であり、2.移動ロボットが音を受信した際に複数のマイクロホン間での信号の伝播時間差を計測ができること、3.ある周波数帯域あたりに使用できる信号が十分多いことの3要件とし、これらについて計算機シミュレーションを用いて検討を行った[1][2]。周波数が時間的に変化する信号(チャープ信号)と、擬似乱数とみなされる信号(M系列信号)を比較したところ、チャープ信号は1, 2には優れるが3については一つのビーコンがある帯域を基本的には独占する。他方、M系列信号は3要件を満たすが、任意で決めるパラメータによってその性質が異なる。具体的には、M系列信号は信号を生成した段階では2値の信号であるため、これを変調することでスピーカなどで発することのできる周波数に変換する。この際に、M系列信号の周波数(チップレート)と変調周波数を変化させて位置推定精度を検討したところ、これらによって位置推定精度が影響を受けることを示した[3]。 [1] 小木曽ら: " M系列符号を用いる音響ビーコンの音源方向推定及び自己位置推定への影響," Robomech2017論文集, 1P1-07b6 (2 pages) (7 June 2016). [2]小木曽ら: "音響ビーコンとマイクアレイによる移動ロボットの位置推定," SATテクノロジー・ショーケース2017プログラム & アブストラクト集, p.109, (31 January 2017). [3]Ogiso et al.: "Effect of Parameters of Phase0modulated Sequence Signal on Direction-of-Arrival and Localization error," Proceeding of the 7th International Conference on Indoor Positioning and Indoor Navigation, 141-RP (6 pages), (5 October, 2016).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は当初、位置推定精度の向上を目的として新たな位置推定用の信号を検討するとともに、これを用いる位置推定アルゴリズムを提案することを目的とした。位置推定精度の向上と同時に使用できる音響ビーコンの数の向上を図るため、M系列信号と呼ばれる疑似乱数を用いる音響ビーコンの信号を提案し、これを用いることで平均誤差0.3 m, 標準偏差0.09 m以内で位置推定が可能であることを示した[1][2]。この過程で、当該信号には任意に定めるパラメータが(i)M系列符号の周波数、(ii)送信信号の中心周波数、(iii)M系列符号の長さ の3種類あり、これらによって位置推定精度が変化することを経験的に確認していた。そのため、新たな位置推定アルゴリズムに適用する前にこれらパラメータによる位置推定精度への影響を明らかにすることが重要であると考え、これらパラメータを変化させた際に位置推定精度が受ける影響について計算機シミュレーションによって検討を行った[3]。その結果、(i)M系列符号の周波数が(ii)送信信号の中心周波数に対して同等以上になると誤差が大きくなることを示した。また、(iii)M系列符号の長さは、(i)M系列符号の周波数が一定と仮定した場合、一定以上の長さであれば誤差は大きくならないことを示した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で音響ビーコンを用いる位置推定にはロボットの移動速度によってその推定精度が変化することが経験的に確認されている。これは音響ビーコンとロボットの位置関係が時間的に変化することでドップラーシフトが起こるためで、ロボットは音響ビーコンの信号を既知であるという前提で推定を行っているにも関わらずドップラーシフトによってわずかに異なる信号が受信されることによる。また、反響のある環境においてはドップラーシフトによる周波数の変化があらゆる方向からの反響それぞれに起こるため、周波数が広がって見えるドップラー広がりがあることが広く知られており、これも位置推定精度に影響を及ぼす。今後はこれらがどの程度位置推定精度に影響を及ぼすのか明らかにするとともに、本年度までに用いていたチャープ信号、M系列符号以外にも通信分野で広く使われている嵩符号等を含め検討を行い、ドップラーシフトの影響がこれらの信号でどう異なるのかを検討する。また、音響ビーコンは反響などによるドップラー広がりによってその方向を推定しづらくなることが予想されるため、ロボットの移動速度を考慮してドップラー広がりが起こった音響ビーコンの信号を推定するなどし、これら影響を低減することで位置推定精度の向上を図る。
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Research Products
(3 results)