2017 Fiscal Year Annual Research Report
イタリア領東アフリカ植民地研究:ファシズム体制下での宗教、人種、性の問題
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16J03600
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
新谷 崇 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 特別研究員(SPD)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | イタリア / 植民地 / 東アフリカ / ファシズム |
Outline of Annual Research Achievements |
研究期間の二年度目にあたる平成29年度は、史料の収集・分析に注力した。初年度の研究活動で浮かび上がった課題を解決するため、二回(計2ヶ月)にわたりイタリアで史料調査を実施した。作業を行った場所は、「中央司法図書館(ローマ)」、「国立中央文書館(ローマ)」、「フィレンツェ国立中央図書館(フィレンツェ)」「ピサ高等師範学校図書館(ピサ)」で、具体的には、1930年代の植民地法に関する議論を拾うために『植民地法雑誌Rivista di diritto coloniale』を、教会法と植民地法の折衷を構想した法学者C・イャナッコーネの著作物を中心に集めた。 成果公開としては、イタリアの植民地統治の様態について史料を翻訳・明示しながら解説する論考をまとめた。これは2018年出版予定の共著書に所収される。さらに、「ファシズムとカトリック教会」(土肥秀行、山手昌樹編『教養のイタリア近現代史』ミネルヴァ書房:所収)、“Il reinserimento degli ecclesiastici nella sfera pubblica italiana attraverso la partecipazione alla Battaglia del grano”, (A. Mariuzzo et al. (a cura di), Un mestiere paziente, Pisa, Edizioni ETS:所収)を、いずれも共著書の形で出版した。くわえて、1930年代のイタリア人聖職者が有していたファシズムへの支持の有り様を考察した論文、“Il piu grande evento dopo la Conciliazione”をイタリアの学術誌『Annali della Scuola』に投稿し、査読を経て、2018年中の出版が決まった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先行研究が少ないうえに、自身にとっては新規に取り組み始めた研究テーマであること、さらに見込んでいた文書群が扱えないという問題があったために、研究開始当初は計画の変更を迫られた。しかし、これまでの二年間を通じて、計画の組み直し作業を通じて課題をより明確に絞り、それに伴う史料の収集作業を実施し、調査で期待通りの史料が得られた。また、研究を通じて得られた知見を公開できている。国際的業績の獲得についても、イタリアにおいて査読付論文と書籍所収論文を一本ずつ出すことができた。以上の状況から、研究活動全体としては順調に進んでいると自己評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の計画としては、これまでに入手した史料を分析し、①植民地統治に関するファシズムの構想、②植民地法の構造、③法学者の議論、④法学者と政府のやり取りを把握する。北アフリカ、東アフリカ、エーゲ海域、バルカン半島に分けて各植民地の様態を整理したうえで、上記分析で得られる成果をファシズム・イタリアの植民地統治全体の中で位置付け直し、本研究の対象である東アフリカ植民地の特質を浮き彫りにする。 くわえて、イタリアでの史料収集を2回(計2ヶ月)実施する。ただし、最終年度ということもあり、基本的には補充調査にとどめるが、「アフリカ・東洋研究所」から「ローマ国立中央図書館」への移管中の文書についても、可能であれば調査し本研究に取り入れる。 以上の研究成果を『西洋史学』など国内学術誌およびイタリアの有力誌への査読付投稿論文としてまとめるとともに、研究期間全体の成果を速やかに単著として出版できるよう、成果公開の作業を進めていく。
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