2016 Fiscal Year Annual Research Report
言語地理学と比較再建に基づく福井・石川両県のアクセントの記述的・通時的研究
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16J03745
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松倉 昂平 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 福井方言 / 加賀方言 / アクセント / N型アクセント |
Outline of Annual Research Achievements |
福井・石川両県に分布するアクセント諸体系の詳細な記述を目指し、平成28年度は以下の地域・地点において現地方言のアクセント調査を行った:1) 福井市沿岸部、2) 今立郡池田町、3) 福井市東部山間部、4) 坂井市沿岸部(坂井市三国町)、5) 丹生郡越前町、6) 南条郡南越前町、7) あわら市北潟、8) 石川県加賀市沿岸部、9) 敦賀市東浦地区。 1)は、どのようなアクセント体系が分布するのかが従来十分明らかでなかった地域である。多地点調査を展開した結果、4種の三型アクセントと1種の二型アクセント(三国式アクセント)が分布することが初めて明らかになった。特に類型的に見て希少な三型アクセントについて今後調査を進め、基礎的なアクセント資料を整備し、アクセント上の諸規則を解明する必要がある。 4)、5)、7)に分布する三型アクセントについては、種々の共時的な性質(動詞活用、名詞複合、付属語添加とアクセントの関係)を分析した論文を28年度中に発表している。特に7)あわら市北潟では複合名詞のアクセントを重点的に調査し、その成果について学会発表を行った。複合語アクセント規則の解明を目指し、まずは2拍+3拍複合名詞について高知市方言の中央式アクセントとの対応関係という歴史的な面から説明を試みたものである。 その他の地域(2) 今立郡池田町、3) 福井市東部山間部、6) 南条郡南越前町、8) 石川県加賀市沿岸部、9) 敦賀市東浦地区)においても、すでに300語~1000語程度の語彙のデータを収集し、アクセント体系の記述・分析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね実施計画に沿って現地調査を展開し、三型アクセント方言に関しては研究成果の報告ができており、順調に進展していると考える。一方で、複雑な音調を持ち、アクセント体系の解釈・分析に予想以上の長期間の調査を要した地域・地点があり、そのような地点では記述の進展がやや遅れているが、次年度以降に挽回できるものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度中にすでに基礎的な記述を達成した地点において調査を継続するとともに、これまでに調査を行っていない地域において新たに調査を展開し、福井・石川各県のより広い範囲のアクセント分布の実態を明らかにすることを目指す。
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