2016 Fiscal Year Annual Research Report
有機ケイ素還元剤による低原子価金属錯体の発生を鍵とした窒素―窒素多重結合活性化
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16J04365
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
川北 健人 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 窒素―窒素二重結合 / 還元的切断反応 / 有機ケイ素還元剤 / 5族金属塩化物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請者が開発した有機ケイ素化合物由来の還元剤により前周期遷移金属の低原子価錯体を発生させ、その高い反応性を活かすことでアゾ化合物や窒素分子などの窒素―窒素多重結合切断反応の開発を行ってきた。本年度、有機ケイ素還元剤により反応系中で発生させた低原子価状態の5族金属塩化物(塩化タンタル、塩化ニオブおよび塩化バナジウム)を用いることでアゾベンゼンおよびアゾピリジンの窒素―窒素二重結合の還元的切断反応を達成し、対応する金属イミド錯体が生成することを明らかにした。本切断反応の反応機構に関する知見を得るために、アゾピリジンと四塩化タンタルまたは四塩化ニオブを反応させたところ、アゾピリジンで架橋された二核金属錯体が生成することを明らかにした。X線結晶構造解析の結果より、これら二核金属錯体中の窒素―窒素結合は単結合性を有しており、二つの金属中心から二電子還元されていることが分かった。また、これらの二核金属錯体を有機ケイ素還元剤を用いてさらに還元することで、窒素―窒素単結合の切断を経て、イミド配位子で架橋された錯体が生成することが分かった。従来の金属還元剤を用いた還元反応とは異なり、有機ケイ素還元剤の「塩を副生しない」という特徴を利用することで、段階的に窒素―窒素二重結合切断反応を追跡することに成功した。また、タンタル、ニオブおよびバナジウムそれぞれの低原子価塩化物の窒素―窒素二重結合に対する還元力の評価を系統的に行ったところ、タンタルおよびニオブは3価、バナジウムは1価まで還元することで窒素―窒素二重結合を還元的に切断できることを明らかにした。本研究成果は複数の国内・国際学会において発表しており、現在、学術論文として投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
有機ケイ素還元剤を用いて発生させた低原子価金属錯体による窒素―窒素二重結合の還元的切断反応を達成した。窒素―窒素二重結合切断反応は、窒素固定化反応における素反応であることから、研究課題の一つである窒素分子の活性化反応、すなわち、窒素―窒素三重結合活性化反応へと展開することのできる重要な成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
窒素―窒素二重結合切断反応によって得られた知見を基に、窒素分子の窒素―窒素三重結合切断反応へと研究を展開する。具体的には、既に報告されている窒素分子で架橋されている錯体を合成し、有機ケイ素還元剤を用いて発生させた低原子価金属錯体と反応させることで架橋窒素分子の活性化反応を行う予定である。また、架橋窒素分子の反応性は、配位している金属中心の電子的環境および立体的環境に大きく依存するため、様々な窒素分子架橋金属錯体を系統的に合成する予定である。
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