2017 Fiscal Year Annual Research Report
樹状突起スパインの刈り込みにおけるオートファジーの役割の解析
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16J04376
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
貝塚 剛志 国立研究開発法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 樹状突起スパイン / プロテオーム / シナプス / シナプス後肥厚 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は(前年度の報告書に記載した方針に従って)樹状突起スパインの制御因子をオートファジーに限らず、より包括的な観点から探索している。具体的には、樹状突起スパインに存在する巨大タンパク質複合体であるシナプス後肥厚(PSD)に着目し、ここに樹状突起スパインの重要な制御因子が含まれていないか調べることとした。 ◆生後発達段階におけるPSDタンパク質のリモデリング 生後の発達段階において、樹状突起スパインの数や単位時間あたりの形成数・剪定数は大きく変化する。この過程にPSDタンパク質のリモデリングが関与している可能性を考え、異なる発達段階のマウス脳からPSDを精製し、プロテオーム解析を行った。その結果、主要なPSDタンパク質はいずれの脳サンプルにも含まれていたが、高い再現性で特定の時期の脳でのみ検出されるPSDタンパク質が計数十個あることが明らかとなった。現在はこれらの因子の樹状突起スパインのダイナミクスへの影響を評価するため、培養神経細胞で機能的二次スクリーニングを行っている。 ◆既存PSDプロテオームデータの分析 PSDタンパク質の中には、これまでに「検出されてはいるがその機能が全く調べられていない」因子が残っており、これらが樹状突起スパインの動態等に関与している可能性があると考えた。このような未解析のPSDタンパク質を洗い出すため、過去に出版されている14報の論文に含まれる、計16セットのPSDプロテオームデータを解析し、統合した。この中には複数のプロテオーム解析で検出されているが、全く調べられていない因子が数十個含まれていた。初代培養の神経細胞を用いて、これらのうち高ヒット数のタンパク質の局在を調べたところ、確かにPSDに局在していることがわかった。よって、このデータ分析はPSDタンパク質を洗い出す有効な手法であることが示唆された。今後はこれらの因子の機能解析を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生後発達段階におけるPSDタンパク質のリモデリングについては、プロテオーム解析の結果、各週齢のサンプルにおいて、それぞれ数千個のタンパク質の検出および定量に成功した。また、これらのデータの全体的な傾向も一通り分析した。ここまででも一定の価値のある知見ではあると考えられる。今後はこの研究をさらに発展されるため、重要と考えられた分子群について、培養神経細胞およびマウス個体を用いた機能解析を進めていく予定である。 また既存PSDプロテオームデータの分析については、培養神経細胞を用いた実験から、この手法が新規PSDタンパク質の同定に有用であることが確認できた。 全体として、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の通り、今後はプロテオーム解析で重要と考えられた分子群について、培養神経細胞およびマウス個体を用いた機能解析を進めていく予定である。まずは培養神経細胞において、shRNAを用いたノックダウンを行った際に、樹状突起スパインまたはPSDの数や大きさ等にどのような変化が生じるかを検証する。shRNAの導入にはレンチウイルスを用いる予定である。予備実験ではレンチウイルスを導入した際に神経細胞が死滅する場合があったため、ウイルスの量を検討する、超遠心等で精製してから用いる、などの工夫を行い、プロトコルを最適化する予定である。
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Research Products
(3 results)