2016 Fiscal Year Annual Research Report
日系アメリカ人二世の国際認識―第二次大戦以後の従軍とハワイ社会の考察
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16J04736
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
松平 けあき 上智大学, グローバル・スタディーズ研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | マイノリティと戦争 / 日系アメリカ人 / 従軍経験 / オーラル・ヒストリー / ハワイ / 進駐軍 / 朝鮮戦争 |
Outline of Annual Research Achievements |
日系アメリカ人の従軍経験はアメリカ社会において国家に多大なる貢献をしたことが賞賛のナラティブで語られてきた。このようなナラティブはアメリカにおいて第二次大戦がファシズムに勝利した「よい戦争」であったとの解釈と、日系二世のヨーロッパ戦線での犠牲的活躍が相互に支え合って構築されてきた。それに対し本研究では日系二世の従軍について、これまであまり中心的に議論されてこなかったアジア地域における経験を論じることで、アメリカ一国史的な日系二世の従軍経験の解釈を乗り越え、かれらの経験に対するより複雑な意味づけを明らかにしようとしてきた。 具体的には、第二次大戦以後の日系二世の主たる派兵先であったアジア地域(日本、フィリピン、朝鮮半島など)における従軍経験を取り上げ、日本語での尋問や通訳の任務についた二世従軍経験者に対し、日系人の多いハワイにて聞き取り調査をおこなった。調査から、アジア従軍経験者はアメリカ社会で共有されている英雄的なナラティブに違和感を感じていること、米兵として従軍しながらも日本人にシンパシーを感じていたこと、またフィリピンにおいては現地の人々に対する認識がハワイ社会のプランテーションの序列関係を反映していたことなどを明らかにした。(研究会および国際学会にて発表) さらに、本研究では二世が日本語で対話をした相手として、在日コリアンや朝鮮半島の人々との関係性にも着目している。グローバル・マイグレーションの結果としての日系二世と、「日本帝国」の結果としての日本語を話すコリアンとの交錯を「ポストコロニアル経験」と位置づける。アメリカ国民として包摂のプロセスにいた二世が依然として「日本帝国の影」と直面していたことについて研究を進めている。(学会にて発表)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2016年度はフィールド調査を2回実施し、研究発表を3回おこなった。フィールド調査で得られたインタビューデータと研究発表で得られたコメントにより博士論文や投稿論文執筆のための準備が順調に進んでいる。 フィールド調査は、沖縄県およびハワイにておこなった。沖縄では米軍占領期の資料から日系アメリカ人が沖縄の人々の共産主義思想の調査に関与していたことを確認した。ハワイでは、これまでと同様インタビュー調査に重点を置き、特に第二次大戦と朝鮮戦争の戦間期に朝鮮半島に進駐した二世、朝鮮戦争に従軍した二世を中心に聞き取りをおこなうことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度も引き続きハワイ出身日系アメリカ人二世のアジア従軍経験を考察していく。日本帝国崩壊と冷戦体制の国際関係の中で、東アジアの中で、戦後ハワイ社会の中で日系アメリカ人従軍経験者が置かれた状況に経験者の語りを位置づけ、層の厚い日系アメリカ人研究に一石を投じる研究となるよう推進していく。そのために、さらなるインタビュー調査と資料の渉猟をおこなう予定である。
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