2016 Fiscal Year Annual Research Report
サイコパシーと攻撃性の関係を媒介するメカニズムに関する多面的検討
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16J05052
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
田村 紋女 広島大学, 総合科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | サイコパシー / 共感性 / 注意機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
サイコパシーの攻撃性が共感性の低さと道徳性の低さという2つの過程から生起することを明らかにするために,本年度は,共感性に着目した検討を行った。 サイコパシー傾向の高い人は,注意機能が高い場合に共感性が低い。つまり,サイコパシー傾向の高い人では,注意機能が高い場合,自身の目標に関連する情報以外に対する反応が低下するため,共感性が低いと考えられている。このことを考慮し,サイコパシーの攻撃性が高まるメカニズムとして,共感性と注意機能の双方の働きを想定した。また,注意機能と攻撃性を多面的に測定し,詳細なモデル検討を行った。 大学生132名を対象にLetter Memory task (更新機能),Color-Shape task (切り替え機能),Stop Signal task (抑制機能) による3種類の認知課題を実施した。サイコパシー,共感性,身体的攻撃,能動的・反応的攻撃性を質問紙法で測定した。 分析の結果,サイコパシー傾向の高い人は切り替え機能が高い場合,共感性の低さに媒介されて身体的攻撃が高かった。さらに,攻撃性を多面的に検討した結果,サイコパシー傾向の高い人は切り替え機能が低い場合にも,反応的攻撃性が高いことが示された。切り替え機能が高い場合は,共感性を喚起する情報に注意が向かないため攻撃性が高まると考えられる。一方で,切り替え機能が低い場合には怒り感情の制御不全に基づいて攻撃性が高まると解釈された。さらに,注意機能を多面的に測定することで,切り替え機能が重要であることが示された。 以上より,予想通り,サイコパシーの攻撃性のメカニズムとして,共感性と注意機能の働きを想定したモデルが妥当であることが示された。加えて,攻撃性と注意機能を詳細に検討することで,サイコパシーの攻撃性が高まる背景には,注意機能が高い場合と低い場合とで異なるメカニズムが混在することも示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度実施予定であった研究は完了しており,サイコパシーの攻撃性のメカニズムとして,共感性と注意機能の働きを想定したモデルが妥当であるという予想通りの結果が得られている。この研究成果は国内学会にて1件,海外学会にて1件を発表しており,さらに1件を海外学会にて発表予定としている (採択決定済み)。また,現在海外誌に投稿する論文を1件執筆中である。さらに,申請内容と関連する研究成果について論文執筆し,海外誌に1件,国内誌に1件の論文が掲載された。 さらに,次年度予定していた研究についても実施中である。具体的には,サイコパシーと攻撃性の関係が,共感性と道徳性の双方によって媒介されることを検討した。本調査では,攻撃性は身体的攻撃のみで検討された。共感性を媒介要因とした場合,サイコパシー傾向の高い人は注意機能が高い場合に共感性の低さに媒介されて攻撃性が高いと予想される。一方で,道徳性を媒介要因とした場合,サイコパシー傾向の高い人は道徳性の低さに媒介されて攻撃性が高いと予想される。したがって,本調査では,サイコパシーと攻撃性の関係には,共感性と道徳性の双方が媒介要因として存在するモデルを構築し,モデルの妥当性を検証する。 クロスマーケティング社に依頼して,一般人口による200名を対象に質問紙調査を実施した。年齢は20代から50代を対象とし,男女比は同程度になるようデータを収集した。結果は現在分析中である。 以上より,本年度実施予定であった研究を完了し,研究成果の公表も実施中である。さらに,次年度予定している研究についても開始し,データを分析中である。したがって,本研究課題は当初の計画以上に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,現在分析中の共感性と道徳性の双方を媒介要因として想定した,サイコパシーと攻撃性の関係に対する包括モデルの検討を引き続き実施する。共分散構造分析などを中心にデータの分析をし,サイコパシーで攻撃性が高まるメカニズムとして,共感性の低さと道徳性の低さの双方が関与することを包括的に検討する。研究成果について学会発表および論文の執筆を実施する。 加えて,道徳性を媒介要因として想定したサイコパシーの攻撃性のメカニズムの検討を実施する。研究を実施するにあたって,まず,攻撃性を測定する課題として,Voodoo doll task (DeWall et al., 2013) を作成する。この課題では,人形に模した絵を親しい他者にみたて,ピンで絵の人形を刺した程度を攻撃性の指標とする。課題が完成次第,研究を実施する。質問紙でサイコパシー傾向と道徳性を測定する。仮説として,サイコパシー傾向の高い人は道徳性の低さに媒介されて攻撃性の高さを示すと予想される。本研究の成果について学会発表および論文の執筆を行う。 さらに,これまでの研究で得られた成果をまとめ,レビュー論文を執筆する。その際,本年度得られた成果である,攻撃性を多面的に測定することによるメカニズムの違いについても考察する。これによって,サイコパシーで攻撃性が高まるメカニズムに関して,より発展的な議論を提供する。
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Research Products
(3 results)