2016 Fiscal Year Annual Research Report
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16J05161
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
川口 成人 京都府立大学, 大学院文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 室町幕府 / 大名 / 守護 / 守護被官 / 取次役 / 在京 / 在国 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、15世紀の室町幕府と守護(大名)被官層の関係構築と、守護・守護被官の在国という動向に着目し、支配体制の転換を明らかにするものである。 本年度の主な成果は以下の通りである。論文として、「足利義教政権後期における都鄙間交渉の転換―取次役からみた室町幕府と地域権力―」(『古文書研究』82号、2016年12月)を発表した。同論文は、足利義教期幕府と在国の地域権力との関係の結節点となった取次役(大名・室町殿側近)に着目して、幕府と地域権力の関係と当該期の権力構造を論じたものである。ここでは、政権後期に取次役の大名のもとで実務を担う存在が、大名被官から室町殿側近へと変化したことを指摘した。また「書評 木下昌規著『戦国期足利将軍家の権力構造』」(『洛北史学』18号、同年6月)で、本研究と関係する同書の成果・課題を確認した。 学会報告として、①「谷徹也氏の業績について―中世史研究の立場から―」(日本史研究会近世史部会、2016年4月)、②「都鄙間交渉にみる細川持賢の二側面―細川一門と将軍近習―」(中近世移行期研究会、同年5月)、③「足利義政期室町幕府と細川氏―取次役としての活動の検討から―」(日韓次世代学術フォーラム第13回国際学術大会歴史分科会、同年6月)、④「室町~戦国期における伊勢氏の活動と発給文書」(日本古文書学会大会、同年9月)、⑤「足利義政政権期の室町幕府―地域権力間交渉」(第18回洛北史学会定例大会、同年12月)をおこなった。①は近世成立期の研究者である谷氏の業績を論評し、近年の中近世史研究の成果を踏まえてコメントを加えた。②は義教・義政期の取次役である大名一門細川持賢について検討し、その室町殿側近としての側面を指摘した。③⑤では義政期の幕府―地域権力間交渉を検討した。④は本研究の基本史料となる伊勢氏発給文書の分析である。②④⑤については、現在論文化を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、(1)室町幕府と守護(大名)被官層との関係構築のあり方、(2)守護・守護被官層の在京・在国状況という2点の検討を主な課題としている。本年度はこの課題について史料の収集と分析を進め、査読付きの学術雑誌に論文を公表することができた。さらに、当初の予定になかった国際学会での学会報告や、本研究と検討時期が隣接する日本近世史研究者の業績を検討する学会報告の機会を得たことは特筆すべき成果である。以上から、おおむね順調に研究を実施できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、研究計画に従い本年度の学会報告をもとにした論文を執筆する。加えて、適宜追加調査を実施する予定である。 また史料収集と分析の過程で、室町幕府支配体制における大名一門の重要性を認識するに至った。これは、本研究で扱う守護被官層の動向とも密接に関係しているため、両者を視野に入れて研究を進めていく必要がある。 具体的には、①本年度実施した細川持賢についての研究を論文化する、②大名被官層に加えて大名一門に関する史料・先行研究を収集し、精読・分析に取り組む。以上の2点を追加で実施し、本研究の目的を発展的な形で達成することを目指したい。
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Research Products
(11 results)