2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16J05192
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
馬場 真理子 東京大学, 人文社会(系)研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 陰陽道 / 暦道 / 賀茂氏 / 暦 / 術数 / 賀茂在方 / 暦林問答集 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、主に2つの課題について研究を進めた。
1)当初の計画通り、陰陽師の活動において2つの異質な世界観―自然法則を核とする術数の世界観と超自然的存在を核とする世界観―がいかにして共存しえたのかという問題を考察した。具体的には、平安時代の陰陽師による天文現象の解釈に注目し、その変遷を追った。本研究では4つの視点―異常現象をもたらす主体・原因・捉え方・対処―を設けることにより、天文現象の解釈の変化が先行研究で指摘されるような画一的なもの(中国的な「天」による譴責から天神地祇の祟りへ)ではなく「異常現象=地上の災いの予兆」という認識を共通項として多様な方向に展開していったことを明らかにした。 2)本年度後半は暦道に注目した。暦道は術数の世界観を追う上で重要な分野であり、この研究は日本における術数の展開を追うという当初の計画に則ったものである。研究を進めるなかで、古代においては一元的に管理されていた暦の知識が、中世に多様化していったことが明らかになった。そのうえで、まずは古代から中世へと世襲的に受け継がれていった宮廷の暦道に着目し、その性格を明らかにしようと試みた。具体的には、古代から中世にかけて宮廷の暦道の中枢を担った賀茂氏が、暦の知識の多様化を前に自らの知識をどのようにして正当化したのか、という問題を論じた。それにより、人格神を中心とする世界観を背景とする民間の暦道に対し、宮廷の暦道は人格神の要素を徹底的に排除して、数理的な法則性に基づく世界観を提示したことが明らかになった。
また、当初の計画において資料収集も予定していた。京都市の寺社や大学附属図書館で調査を行い、主に上記の2のテーマに関わる資料を集めることができた。これらの資料を基盤として、日本における術数の時代的変遷を追い、日本宗教思想史の中に位置づけるという本研究の課題を今後遂行できると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、年度前半で術数の歴史的展開について整理し、年度後半で陰陽師の活動における術数の世界観と超自然的存在を核とする世界観の関係性について扱う予定であった。また、今後の研究を進めるための一次資料の収集も本年度の目標であった。順番は前後したものの上記の目標はほぼ達成され、また学会発表や論文執筆を通してその成果を形にすることができた。よって望外の進展はないものの、本研究はおおむね順調に進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も当初の研究計画に沿って本研究を進めていく予定である。すなわち収集した資料に基づき、陰陽道における術数の世界観の展開を追う。ただし、本年度は主に古代から中世にかけての展開を追ったため、次年度は遡って中国から日本への伝来、日本での受容の問題を中心的に扱うことになる可能性がある。また、本年度の研究を進めるなかで本課題における暦道の重要性を再認識したため、暦道にもある程度の重点を置き、「聖なる時間・俗なる時間」などの宗教学的な問題と本研究を結び付けたいと考えている。
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Research Products
(3 results)