2016 Fiscal Year Annual Research Report
粗微動間連結分離機構を有する次世代型超精密位置決めステージの制御系設計
Project/Area Number |
16J05268
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
矢﨑 雄馬 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 精密位置決め制御 / 2段アクチュエータ / 制約付き制御系 / 無線電力伝送 / 磁界共振結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
半導体集積回路や液晶パネルは,シリコンウエハ・ガラス基板に微細な回路パターンを露光することにより製造される。近年,半導体や液晶パネルには低価格化及び高精細化が求められており,それに伴って半導体・液晶製造装置にもステージの更なる大型化・高速高精度化が求められている。 これらのステージでは位置決め性能を向上させるため,様々な外乱を除去する必要がある。機械共振は設計により,摩擦による外乱はエアガイドを用いることにより解決できるが,ケーブル外乱はステージの姿勢によって変化する再現性のない外乱であるため除去することが難しいとされてきた。 そこでケーブル外乱を抜本的解決すべく,まず無線電力伝送によりセンサーやモータへの給電を行う新たなコンセプトの精密位置決めステージの試作した試作した実験ステージは送電用のロングコイル,受電用のショートコイル,整流回路及び制御回路,駆動用のリニアモーターにより構成される。コイルにより無線で電力を送電し,整流回路を通してステージを駆動するモータ及び各種センサーに電力を供給することにより,受電側には外部からのケーブルがほとんどつながれない構成になっている。その結果ケーブル外乱が劇的に減少することを実験により示した。本研究結果は9月29日に行われた国内研究会 「平成28年メカトロニクス制御研究会/精密サーボシステムと制御技術」で発表した。 現在は精密位置決めステージのための最適なコイル設計及び回路設計について研究を行っている。無線電力伝送においては送電電力,効率,受電側電圧がコイル設計の指標として用いられているが,今まではそのコイル設計は経験的にしか行われておらず,理論的な設計手法が存在しなかった。そこで送電電力,効率,受電電力とコイル形状の関係を定式化することにより,理論に基づいた設計手法の構築を目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度前半においてはカタパルトステージの減速時における粗微動間の衝突力緩和問題について取り組んだ。本研究ではモデル予測制御を用い,そのリアルタイム処理に苦しんだものの最適化計算法を工夫することにより解決することができた。 本年度の後半は無線電力伝送を用いた精密位置決めステージの実験製作及びその有効性の実証を行った。実験機製作の際には機械設計,回路設計,制御器設計が必要になるが,機械設計や回路設計に関しては共同研究者と綿密な議論を行い,簡単な回路を事前に作成し正常に動作することを確かめた後に実際の実験ステージ用の回路を作成することによりスムーズに実験機製作を行うことができた。 無線電力伝送を用いた精密位置決めステージの実験による検証に関しては,モータドライバの仕様により難しい部分もあったが,有効性の実証には成功した。しかし回路構成はまだ最適化されたものとはいえないため,今後改修する必要はあるように思う。 研究を進める上では,指導教員及び研究室メンバー,共同研究企業メンバーと熱心に議論を行った。多くの人と議論した上で研究を進めたため,研究の方向性としてはそれほど外れてはいないと感じているので,この方向で研究を続けていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度においては1軸のワイヤレス精密位置決めステージの実験機を作成し,その有効性を示した。本年度は多軸のワイヤレス精密位置決めステージの製作及びその検討を行うよていである。このステージはより実際の産業機器に近い構成となっており,共同研究企業と綿密な議論を行い,その機械設計,回路設計,制御設計の仕様を決定しているところである。 今後まず行う研究としては,精密位置決めステージのための最適なコイル設計について研究があげられる。機械設計,回路設計の仕様を決定するためには,それらの要求仕様を満たすコイルの作成が不可欠である。無線電力伝送においては送電電力,効率,受電側電圧がコイル設計の指標として用いられているが,これまではそのコイル設計は経験的にしか行われておらず,理論的な設計手法が存在しなかった。そこで送電電力,効率,受電電力とコイル形状の関係を定式化することにより,理論に基づいた設計手法の構築を目指している。 コイル設計に関する研究は現状は多軸ワイヤレス精密位置決めステージのために行っていることであるが,一般性が非常に高くその他産業機器への適用も期待されるため,その他の実験機を用いてその有効性の検証も行っていきたいと考えている。
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