2017 Fiscal Year Annual Research Report
粗微動間連結分離機構を有する次世代型超精密位置決めステージの制御系設計
Project/Area Number |
16J05268
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
矢﨑 雄馬 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 制御工学 / モーションコントロール / 精密位置決めステージ / ケーブル外乱 / 無線電力伝送 / コイル設計 |
Outline of Annual Research Achievements |
機械共振と外乱は精密ステージの性能を劣化させる2大要因である。機械共振は装置の構造を工夫し共振周波数を高めることで解決されてきた。外乱は摩擦外乱とケーブル外乱に大別され,摩擦外乱は高圧空気や磁気によりステージを浮上させることで劇的に低減されている。一方依然として多くの例において,電力線や通信線などがステージに繋がっており,現在ではこれらに起因するケーブル外乱が主要な外乱要因となっている。 そこでケーブル外乱を抜本的解決すべく,無線電力伝送によりセンサーやモータへの給電を行う新たなコンセプトの精密ステージ(WHPS)を提案する。2016年度では一軸のWHPSを試作し,ケーブル外乱が劇的に減少することを実験により示した。 しかし,実際は多軸の精密ステージが多く使われているため,2017年度は多軸のワイヤレス精密ステージ(WHPS2)の設計,製作を主に行なった。WHPS2は2つの粗動部と1つの微動部を組み合わせた構造となっており,X,Y軸の2方向に駆動可能である。 WHPS2ではまず動作軌道が与えられ,それに伴い伝送すべき電力が決定される。伝送電力の他にもドライバの許容電圧や伝送効率が事前に要求仕様として与えられるため,それらの要求仕様を満たすWPT用コイルの設計が必要である。従来WPT用コイルは製作者の経験に基づいて設計されていたが,本研究ではコイルの抵抗及び相互インダクタンスをモデル化することにより,要求仕様を満たすコイルを最適化計算により設計した。このことにより製作者の経験に依らず誰にでも目的を達成できるコイルを作成できるようになった。この手法はWHPS2のみならず一般的なコイル設計に適用可能な手法であり,産業界への貢献が大いに期待できる。作成したコイルにより無線電力伝送が可能なことは確認しており,今後は無線電力伝送によりWHPS2が動作できることを実験により実証していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2016年度においては1軸のワイヤレス精密位置決めステージの実験機を作成し,その有効性を示した。そして2017年度では多軸のワイヤレス精密位置決めステージ(WHPS2)の設計・製作を主に行なった。このステージはより実際の産業機器に近い構成となっており,共同研究企業と綿密な議論を行い,その機械設計,回路設計,制御設計の仕様を決定した上で試作機を完成させた。 ステージを完成させるに当たっては伝送電力やライバの許容電圧,伝送効率などの要求仕様を満たすようなWPT用コイルの設計が必要である。従来はWPT用コイルの設計は製作者の経験に基づいて設計されていたが,それではコイル設計にばらつきが出てしまうため産業的には好ましくない。そこで本研究ではコイルの抵抗及び相互インダクタンスをモデル化することにより,要求仕様を満たすコイルを最適化計算により設計した。最適コイル設計法の確立は当初の研究計画に含まれており,おおよそ研究計画通りに研究が進んでいると考えられる。これらのコイルにより無線電力伝送が可能なことは確認しており,今後は無線電力伝送によりWHPS2が動作できることを実験により実証していく。
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Strategy for Future Research Activity |
WHPS2の製作が完了したため,本年度前半では無線電力伝送によりWHPS2が動作できることを実験により実証していく。基本的には簡易な制御則により無線電力伝送が可能になっているが,より高効率な制御を行なうために電気回路にはFPGAが搭載されており,FPGAによる同期整流制御を達成することも本年度前半の目標である。 WHPSのコンセプトが成立することを示した後,本年度後半ではWHPS2をより効率的に運用する手法について研究を進める。具体的にはWHPS2は事前に目標軌道が与えられることから各時刻における必要な伝送電力が既知であるため,フィードフォワード的に伝送電力を制御することにより効率向上を達成すること,WHPS2は多段給電という例を見ない構造を持っており2段目の動作が1段目に影響を与えるため従来の最適効率制御が適用できないという問題を解決することなどが挙げられる
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