2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16J05446
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大場 淳平 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 宇宙論 / 修正重力理論 / インフレーション / ダークエネルギー |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、インフレーションという宇宙の初期に起こったと考えられている宇宙の加速膨張に関連した研究を行った。そこでは、標準的に考えられている宇宙の空間平坦性を拡張し、一般に空間曲率を持つ場合にインフレーション理論が示唆する初期揺らぎを用いて、観測量の数値シミュレーション及び統計解析によるパラメータ推定を行った。観測量としては、Planck衛星による宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の最新の観測結果を用いた。本研究のモチベーションとして、以下の2点があげられる。1つ目は、CMB温度揺らぎの大角度成分における、観測データと数値シミュレーションとの不一致である。2つ目は、宇宙の大規模構造の揺らぎの大きさにおける、理論と観測の不一致である。これらの不一致を、空間曲率を持つ場合のインフレーション理論が作る初期揺らぎによって、説明できるかどうか調べた。結果として、これらの不一致を緩和できる可能性が示唆された。 さらに、現在の宇宙の加速膨張を担っているとされているダークエネルギーに関する研究も行った。現在、標準的に考えられている理論では、宇宙のエネルギー組成のなかで、ダークエネルギーのエネルギー密度は一定としている。このような理論は、シンプルである一方で、いくつかの課題を抱えており、より一般的な理論として、エネルギー密度が時間変化するダイナミカルなダークエネルギーの理論模型が数多く提案されている。私は、宇宙が空間曲率を持つ場合のインフレーション理論をもとに、現在の宇宙の加速膨張をダイナミカルなダークエネルギー模型で計算し、観測量との比較を行った。結果として、このような理論模型においても、上部で議論した観測と理論との不一致を緩和できる可能性を示唆する結果が得られた。今後リリースされる新たな観測データとも合わせて、より現実に即した理論模型の探求は、一層盛んになっていくことが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究成果は論文にまとめ、既に投稿している。本研究で、計算コードの作成及びデータ解析は全て私自身で行っており、研究成果の内容は国内外の研究会で積極的に発表をし、多くの研究者と議論を盛んにしている。従って、申請書に記載した通り、精力的に研究活動を行うことが出来ている。以上のことから、本研究は当初の予定通り順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで本研究を推進するにあたり、数値計算及びパラメータ推定を行う技術を着実に身につけることができた。また、海外の研究会における口頭発表などの経験を通して研究者として重要な発信する力も確実に向上している。従って、今後も標準的な宇宙論モデルを拡張した様々な理論模型に着目し、宇宙論的な観測結果を用いて拡張理論への制限を行い、成果を発信していきたいと考えている。
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