2016 Fiscal Year Annual Research Report
OECD諸国における学校評価制度とその効果に関する比較分析
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16J05750
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐々木(水口) 織恵 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 学校評価 / 目標管理 / NPM |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、諸外国の学校評価制度を目標管理の視点から類型化した上で、こうした学校評価制度の差異が教職員間の協働にどのような違いを生じさせるのか明らかにすることである。分析の視角として、トップダウンとボトムアップの目標管理という軸を用い、第一の作業課題として諸外国の学校評価制度にトップダウンとボトムアップの目標管理がどのように反映されているのかを明らかにすること、第二の作業課題として学校評価制度の差異が教職員間の協働にどのような違いを生むのか明らかにすることを設定した。 本年度は、第一の作業課題について、フランスと日本の事例を基に制度分析を行った。フランスで実施されている参加型学校評価の試みが教職員間の協働にどのような影響を及ぼしているのかをボルドー大学区におけるフィールドワークから明らかにし、フランス教育学会紀要の論文「参加型学校評価による教師の協同的省察の可能性とその条件―フランス、ボルドー大学区における実践事例の検討を通して―」として掲載された。また、日本の市町村教育委員会における学校評価制度における目標管理の動態について、10月の日本教育行政学会で発表し、その後同学会の学会誌に投稿した。また、学校評価を教育条件の面からも分析し、「教育条件を重視する学校評価の理論と制度―教職員,児童生徒・保護者一体の学校づくりの観点から―」という題目で、千葉工業大学紀要に共著論文として掲載された。 第二の作業課題については、ランダムサンプリングによって抽出した日本の小中学校を対象に質問紙調査を実施し、各学校の学校評価の実践における目標管理の実態とそれが教職員間の協働にどのような影響を及ぼしているのか、現在分析を行っている。同分析結果は6月の日本教育経営学会で発表し(発表題目:学校評価における目標管理が教職員間の協働に及ぼす影響に関するマルチレベル分析)、11月に投稿する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フランスにおける現地調査から、ボトムアップ型の目標管理が教職員間の協働に果たす条件について仮説生成を行った。こうした仮説を日本や諸外国で検証することによって、今後多国間比較を行うことも可能になると考える。 また、日本の学校評価の制度と実践においてボトムアップとトップダウンの目標管理がどの程度運用されているのかの実態も明らかになったが、日本の実態を踏まえた上で、今後海外での実践を見ていくことで、日本の独自性や課題がより明確になると考える。 以上の理由から、本研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、日本において、ボトムアップ型の目標管理を実践している学校評価の事例分析を、岡山県と鳥取県、静岡県で行うことを想定している。フランスにおける現地調査で得られた仮説を基に、日本の学校評価の目標設定において、合意形成がどのように図られるのかを明らかにすることで、日本特有の課題を明らかにしたい。ここでの分析結果は、海外の教育ジャーナルに投稿する予定である。 更に、フランスにおいて、トップダウン型の目標管理を実践している学校評価の事例分析を、モンペリエ大学区を対象に行う予定である。ここでの事例分析は、ボルドー大学区の事例と比較し、比較教育学会の紀要に投稿する。
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