2017 Fiscal Year Annual Research Report
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16J05887
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
清水 光明 東京大学, 史料編纂所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 中井竹山 / 草茅危言 / 寛政改革 / 後桜町天皇 / 光格天皇 / 田沼時代 / 明治維新 / 山階宮晃親王 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、前年度に遂行できなかった史料調査及び論文等の執筆活動に重点を置いた。まず、史料調査については、具体的には、東京大学史料編纂所・東京大学附属総合図書館・国立国会図書館・国立公文書館・早稲田大学附属図書館・アジア経済研究所図書館等で実施した。そして、それらの機関の所蔵史料・文献を閲覧・撮影・複写した。 次に、論文等の執筆活動については、本年度は投稿論文1本を公刊することができた。この論文は、大阪大学附属図書館懐徳堂文庫が所蔵する中井竹山自筆本の「草茅危言」五巻五冊を取り上げ、書誌学的に検討したものである。従来の研究では取り上げられてこなかったこの竹山自筆本が、「草茅危言」の形成過程や寛政改革との関係を考察する上で必須の史料であることを明らかにした。 また、本年度は、この論文を含めた博士論文「「草茅危言」と政治改革――懐徳堂学主・中井竹山の思想」を書きあげ、2017年12月に東京大学大学院総合文化研究科に提出した。この論文は、竹山の主著である「草茅危言」の形成過程及び寛政改革における機能の実態・背景について、同時代の朝廷・幕府・諸藩の動向やそれに対する竹山の認識等を踏まえながら基礎的な事実関係を解明した上で、東アジアにおける比較史上の論点や展望を提示したものである。2018年4月末に正式に学位が授与された。 それから、本年度は、日本思想史学会が編集する事典の項目を二つ依頼されたため、それについての執筆も行った。一つ目は、「東アジアの中の近世日本」という項目で、戦前から戦後・現在までの時代区分論――とくに、「近世」概念――についての主要な論争や論点を史学史的に整理したものである。二つ目は、「懐徳堂」という項目で、懐徳堂に集った思想家たちについて最新の知見に基づいて紹介したものである。その他、学会の月報に、自分のこれまでの研究内容を簡単に紹介したエッセイを掲載した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、前年度に調査し発見した諸史料を分析し、その一部を上記の博士論文に盛り込むことができた。そのことによって、研究に一応のまとまりをつけることができ、さらには今後の展望・課題も見えてきたため、有意義な年度であったと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、上記の展望・課題を見据えながら、さらなる史料・文献調査を行い、口頭報告や論文執筆を行っていきたい。
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