2017 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀初頭イタリアの文学と映画における身体の表象
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16J05894
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
石田 聖子 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | イタリア文学 / 映画 / 喜劇 / 身体表象 / ピノッキオ / 未来派 / パラッツェスキ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、20世紀初頭イタリアの文学と映画にみられる身体表象を表象文化論的観点から考察するものである。本年度は、初期喜劇映画研究を中心に研究活動を実施した。初期喜劇映画ならびに関連映画作品の鑑賞のほか、関連文献、評論、新聞・雑誌記事の精読を行った。初期喜劇映画のなかでも特に、1911年に製作された映画『ピノッキオ』(ジュリオ・アンタモーロ監督、フェルディナンド・ギョーム主演)を主な考察の対象とした。同作品には、小説『ピノッキオの冒険』(1883年)の史上初の映画化作品として、後続する〈ピノッキオ〉表象の様式と普及だけでなく、映画史の転換期に製作されたことからイタリアにおける映画の展開にも少なからぬ影響を及ぼした経緯がある。あわせて、原作小説と、原作小説に着想を得て制作された〈ピノッキアーテ〉と呼ばれる一連の文学、映画作品の収集、精読、分類、検討にも努めた。国外での調査としては、平成29年9月8日から9月23日にかけて、ボローニャ、トリノ、ピサの市内図書館、シネマテークを訪問し、ピノッキオをめぐる先行研究の資料を収集した。平成30年2月19日から3月10日にかけて再度渡伊し、主にボローニャ市内図書館、シネマテークにて、初期映画の身体表象に関する資料調査にあたった。本年度実施した研究成果の一部は、イタリア学会における口頭発表「変容する身体―視覚文化のなかのピノッキオ」(平成29年10月21日、於上智大学)国際シンポジウムにおける口頭発表「Zavattini e i media: dalla letteratura al cinema」(平成30年2月21日、於ローマ・ラ・サピエンツァ大学)、口頭発表「Pinocchio nella cultura visuale」(平成30年2月23日、於ダンテ・アリギエリ外国人大学)にて報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は前年度に実施した研究成果を踏まえた継続的で発展的な研究活動が実施できたことからおおむね順調に進展していると考える。具体的には、前年度行なった研究報告を論文化したほか、前年度中に研究報告した際に会場で得たフィードバックを加味した新たな観点のもとでの研究報告が実現できた。加えて、二度にわたり国際シンポジウムでの口頭発表の機会を得たことは、研究者ネットワーク拡充のためにも有益な経験となった。反省点としては、博士論文の日本語版の作成が遅滞していることが挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初、平成29年度に実施予定だった未来派研究を平成30年度に中心的に実施する予定である。未来派の理念を、特にその映画への関与を明らかにすることが主たる目標となる。本年度実施した初期喜劇映画研究の成果を踏まえたうえで未来派に対峙することで、従来の未来派・アヴァンギャルド研究とは異なる視座に立てることが本研究の強みとなる。具体的には、未来派と未来派映画に関する資料、宣言、批評、新聞・雑誌記事の複写や購入を通じた収集を行い、それらの整理、精読、分析、考察にあたる。未来派やアヴァンギャルドの多角的な理解を目指すべく、ダダやシュルレアリスムをはじめとしたイタリア外で興隆した歴史的アヴァンギャルド、またイタリアで1960年代に興ったネオアヴァンギャルドに関する調査も並行して進めてゆく。得られた成果を報告や論文にまとめ、国内外の研究集会や論集に発表する。
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