2017 Fiscal Year Annual Research Report
地球型惑星の初期進化統一モデルの構築:表層環境の多様性の予測とその起源の理解
Project/Area Number |
16J06133
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
濱野 景子 東京工業大学, 地球生命研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 大気放射 / マグマオーシャン |
Outline of Annual Research Achievements |
マグマオーシャンの熱フラックスは,初期の高温で溶融度が高くマグマの粘性が低い段階では,地表の放射バランスで律速される.そのため,マグマオーシャンの熱史を明らかにする上では,形成される大気による保温効果・温室効果を評価することが重要となる. 本研究では,大気による保温効果・温室効果を評価するために,非灰色H2-H2O大気の大気構造・放射フラックス計算を行うための大気モデルの開発を行った.惑星の冷却固化の過程で,大気の量・組成,また地表温度は大きく変化しうる.大気-マグマオーシャンの進化計算を行うために,事前に広いパラメータ範囲での放射計算を行い,その結果をテーブル化する必要がある.平成29年度,この計算の過程で,大気構造が現在の惑星大気に見られるような,下層に対流層(対流圏),その上層に放射層(成層圏+中間圏)といった二層構造だけでなく,より多様な構造を取りうることが判明した.そのため当初計画より一部繰り下げ,コード修正と追加計算を行った. 放射対流平衡の構造計算の過程で,多様な大気の層構造を取り扱えるようモジュールを修正した.また,地表温度(1,000-3,000K), 大気組成(水蒸気モル分率0.01-1)の範囲で放射対流平衡計算を行った.その結果,水蒸気モル分率が1から減少するにつれて,全層が体流層→複数の対流層・放射層が交互に存在→対流層+放射層の二層構造と構造が変化していく傾向にあることがわかった.また,この傾向は地表温度が高いほど(2,500K以上)顕著となる.その結果,地表の大気圧が300barの場合で,惑星放射フラックスが約3倍ほど全体流している場合と比べて大きくなることがわかった.一方,比較的低温(2,500K以下)や大気量が多い場合では,全体流している大気構造との違いは小さく,数%から20%程度に留まることがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初,先行研究の結果を参考にし,大気構造を二層(対流層+放射層),もしくは全体流の層構造を想定しモジュールを開発していた.得られた放射フラックスから,大気組成・地表温度の変化に伴ってより多様な大気層構造が形成されることがわかり,これらを取り扱うためにモジュールの修正を追加で行った.それに加え,複数の放射層・対流層が生じる場合,これまでの簡単な構造に比べ,平衡構造に達するまでにかかる計算時間が飛躍的に伸びてしまった.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでのパラメータスタディの結果,大気量・組成・地表温度に対して,どのような場合に複雑な大気構造となり,時間を要するのかについて検討をつけることができた.また,各パラメータで,もっとも早く計算できる全体流の場合と比べて惑星放射が受ける影響の程度について評価を行い,進化計算を行う上で注意すべき点についても明らかにすることができた.この検討をもとに,惑星放射のテーブル化を行い,構造変化に伴うフラックスの違いが結論に与える影響を評価していく.
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