2017 Fiscal Year Annual Research Report
模型の詳細に依らない重力理論の統一的枠組みに関する研究
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16J06266
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡邉 陽太 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | Horava-Lifshitz重力理論 / 平坦性問題 / 有質量重力子 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.一般相対論はこれまで行われたすべての検証実験と整合的な重力理論であるが、摂動的に繰り込み不可能なために重力の量子効果が無視できないエネルギースケールでは予言力を失う。量子重力理論の候補としては弦理論が有名であるが、一方で場の理論の枠内で摂動的に繰り込み可能な重力理論の候補として時間と空間が非等方にスケールするHorava-Lifshitz(HL)重力理論が近年提唱された。この理論を用いると、エネルギースケールの高い初期宇宙を記述することが可能である。初期宇宙には標準ビッグバン宇宙論の抱える様々な問題があり、それらを解決するために宇宙が指数関数的加速膨張(インフレーション)するように新たな自由度を手で加えることが多い。しかしHL理論を考えると、インフレーションを導入すること無くそれらの問題をいくつか解決できることが知られている。そこで発表論文では、それらの問題の一つである平坦性問題をもHL理論は解決できることを示した。
2.一般相対論は無質量重力子の場の理論であるが、一方で有質量重力子の場の理論を観測と矛盾無く構成することは難しく非自明であることが古くから知られている。有質量重力子を含み安定な一様等方宇宙解を持つ理論として、複計量重力理論が近年提唱された。この理論には有質量重力子と無質量重力子があり、一方の重力子の質量をある程度小さくすると新規な重力波波形を予言し現象論的に面白い。しかしその場合、理論に含まれるパラメータの微調整無しには初期宇宙に適用できず、さらに太陽系における検証実験と矛盾してしまう。そこで先行研究において、一方の重力子の質量が環境に依存するような機構が導入され、微調整無しに初期宇宙にも適用できるカメレオン複計量重力理論が提唱された。それを受けて発表論文では、カメレオン複計量重力理論における一様等方宇宙まわりの摂動が満たすべき安定性条件を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は二論文が査読付き雑誌に受理された。特に一点目の論文では、Horava-Lifshitz重力理論に限らずより一般的な時間と空間の非等方性を持つ理論を考え、その場合に平坦性問題が解決される条件を明らかにした。この結果は、半古典近似が成立しない等により不明点の多い宇宙生成時の詳細には依らない確固たるものである。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度はHorava-Lifshitz重力理論がインフレーションを導入せずとも平坦性問題を解決できることを示した。しかし、インフレーションの代替案とするにはまだ解決すべき問題がある。それらの解決に向けた基礎的な考察を進めていく。
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Research Products
(7 results)