2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16J06326
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
河野 太祐 九州大学, 生物資源環境科学府, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
|
Keywords | ナガコバチ科 Eupelmidae / 分類学 / 寄生蜂 / 生態学 / 虫えい形成者 / 木材穿孔性甲虫 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はなるべく多くのナガコバチ科のサンプルを入手する目的で、野外調査や室内飼育をおこない、サンプルの収集に注力した。捕虫網やトラップを用いた野外調査をおこない、多くの重要なナガコバチ科の標本サンプルを入手することができた。また、昆虫の卵や木材穿孔性昆虫の潜む腐朽材のような寄主資源を採集し、研究室内で管理を行った。これらの材料からもナガコバチを含む多数の寄生蜂が羽化してきている。 福岡県近隣より虫えいを採集し、虫えい形成者であるタマバチ科、タマバエ科に寄生するナガコバチ類を羽化させサンプルとした。また、鹿児島県の大隅半島および奄美大島では腐朽木材を回収した後、研究室で保管管理することでカミキリムシ科、タマムシ科等の木材穿孔性甲虫に寄生するナガコバチ科の、特にCalosotinae亜科のナガコバチ類を多く得ることができた。さらに、クサギカメムシの卵塊を九州大学箱崎キャンパスやその近隣地域に設置し、野外で寄生蜂に産卵させた後、回収、保管管理することで、Eupelminae亜科のナガコバチ類を得ることができた。これらの調査で得られたサンプルは、無水エタノールに保管した後、随時DNA解析をおこなっている。さらに、海外の博物館よりいくつかの模式標本を借り入れ、手元にあるサンプル標本との比較・同定を進めている。 また、韓国や中国のコバチ上科の研究者と電子メールを介して積極的な交流を図っている。日本国外の東アジア産ナガコバチ科についての情報や標本の交換が進み、これらの地域のナガコバチ科相に関する重要な知見が集まってきている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度は,海外の研究機関の標本調査が先方と予定が合わず実現しなかったため,担名タイプや同定済みのリファレンスコレクションを参照することが出ていない.しかしながら,ハワイのビショップ博物館をはじめ,国外の研究機関から模式標本を借用するなど,日本に産するナガコバチ科の種多様性の解明に向けて一歩ずつ着実に準備を進めているといえる.また,野外調査は適切なタイミングで重要な地域で実施できているため,得難い木材穿孔性昆虫の寄生者をはじめ,生態情報を含んだサンプル収集が進んでいることも評価したい.サンプルの同定が予想より進展しなかったことが学会講演できていないなど研究業績の停滞につながっていることは否めないが,今後サンプルの整理・検討が進めば十分挽回できるレベルである.
|
Strategy for Future Research Activity |
日程調整がうまくゆかず28年度には実施できなかったが、スケジュールがまとまり次第海外の研究施設で標本調査をおこなう。 Canadian National Collection of Insects(カナダ)およびAlexandru Ioan Cuza University(ルーマニア)において標本調査をおこなう。 また現在執筆中の論文2本に関しても、年度半ばまでの出版を目指す。
|