2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16J06326
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
河野 太祐 九州大学, 生物資源環境科学府, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
|
Keywords | ナガコバチ科 Eupelmidae / 分類学 / 侵略的外来種 / カメムシ / 寄生蜂 / 木材穿孔性甲虫 / タマムシ / 害虫 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は前年度までに採集および各研究機関より借用したサンプルの解析と、その結果の論文化に取り組んだ。9月には、ナガコバチ科の世界的権威であるFusu博士(Al. I. Cuza University、ルーマニア)の元を訪問して、膨大なヨーロッパ産ナガコバチ科の参照標本を日本産の標本と比較検討することができ、これまで文献情報だけでは正確に同定することができなかった多くの標本を同定することができた他、日本産の標本に多数の未記載種が含まれていることが明らかになった。その他、国内外の研究者との人脈を積極的に築き、共同で研究をおこなうことで、申請者一人ではなし得なかった、より包括的な研究プロジェクトを複数開始することができた。 Calosotinae亜科のCalosota属については、ヨーロッパ産の標本との比較を行った結果、我が国には2既知種および25種の未記載種が分布することが判明した。Eusandalum属は小笠原諸島産の未同定種を、近縁種のタイプ標本と比較した結果、未記載種であることを確認した。 Neanastatinae亜科については、Metapelma beijingensis Yangが、マスダクロホシタマムシを寄主としていることが明らかになった。同じくMetapelma属に属する小笠原諸島産の未同定種を、近縁種のタイプ標本と比較した結果、未記載種であることを確認した。 Eupelminae亜科については、Coryptilus属を前述のLucian Fusu博士らと共同で研究をおこない、東洋区および日本を含めた東旧北区から複数の未記載種を見出した。Anastatus属については、日本産種でこれまで正体がつかめていなかった種の詳細かつ同定形質として有用な形態的特徴をつかむことができた。さらに、本属には2既知種のほかに複数の未記載種が我が国に分布していることが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
論文出版に向けて多くの分類学的、生態学的情報を数多く収集することができた。また、海外の研究施設への調査やタイプ標本の借用を行うことで、日本産の標本の同定が飛躍的に進んだ。さらに、国内外の研究者と協力して、より包括的な研究プロジェクトを開始することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
来年度は日本産Anastatus属、Australoodera属、Tineobius属、Zaischnopsis属およびMerostenus属の分類および生態の解明を進める。特にAnastatus属については、台湾に分布する種についても台湾の研究者らとの共同研究をおこなう。 中国科学院において、所蔵されている中国産のナガコバチ科の標本調査や、国内外の研究施設からタイプ標本を借用をおこない、日本産標本の同定を進める。飼育実験にも引き続き取り組み、タマバエ、タマバチのゴール採集やカメムシやガの卵塊設置、野外からの枯死木材収集を通じて、これらを利用している昆虫類に寄生しているナガコバチ類の生体サンプルの収集に務める。 分子実験にも取り組む。特に、害虫カメムシ類の寄生者として、応用上重要なAnastatsu japonicusおよびその近縁種のDNAバーコーディング領域を解析し、困難なオス成虫、幼虫の同定を可能にする遺伝情報を得る。 7月に松山市で行われる国際膜翅目会議に参加し、研究成果を発表する。また、現在執筆中の2編の論文を国際誌に投稿するほか、他の分類群についても研究成果がまとまり次第論文化を進める。
|