2016 Fiscal Year Annual Research Report
Influence of the rotational motion of colloidal particles on phase behaviour - numerical simulation and experimental system development
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16J06649
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
柳島 大輝 東京大学, 生産技術研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | コロイド / 流体力学 / 回転 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の主な目的は(1)FPD法(Fluid Particle Dynamics)を用いた数値計算プログラムの構築と(2)近接コロイド数個、一列になったコロイド等比較的粒子数の少ない系においてコロイドの回転運動相関を探ることであった。
(1)は順調な経過が見られ、近いうちにこのプロジェクトで用いるFPD法に基づく数値計算プログラムが完成する。まずはMATLABを使ってプロトタイプを完成させ、一定のトルクを加えることにより低速で回転する球体(FPDの場合、局所的に粘性が高い球状の流体領域)付近の流れ場等を計算した。MATLABのコードは比較的読みやすく手を加えやすいためFPD法を初めて扱う学生等のために何等かの形で公開したいと考えている。続いてFortranで高速かつ長時間の数値計算が可能なプログラムを構築した。特に流体の計算の基礎となるNavier-Stokes方程式の解法は安易かつ演算速度の速いMAC法を用いたため、長時間においての計算と計算領域の形状に依存しないシミュレーションが可能となった。長時間においての安定性の確認、効果的なデータの保存と可視化等を考慮しながら仕上げていく。(2)は(1)のプログラムが完成した後始める予定である。
これらの開発と同時に回転可視コロイドの実験系完成のためオックスフォード大学物理化学研究所のRoel Dullens教授の研究室を訪問している(~平成29年10月1日予定)。合成法開発はこの課題の一部ではないが、当研究室でハイブリッド光ピンセット・共焦点顕微鏡が開発されたことを知った。主な特徴として顕微鏡の光学系と光ピンセットがまったく独立している。これと回転可視コロイド系の完成により上記(2)において数値計算のみではなく実験から直接データを取得することが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MATLABとFortranのFPDプログラムはどちらも新しく独自に開発したため、運動方程式の解法等を自由に選択でき、あらゆる改良が可能である。特に前者は読みやすくプログラミングのノウハウを多く要しないためFPDの学習教材として使用が可能である。しかし、開発には当初の予定より多くの時間がかかり、実際に回転相関のデータが得られていないため、計算状況のみでの自己評価は上記区分では「(3)やや遅れている」と言わざる負えない。
数値計算の主な目的は任意の配置に置かれる少数のコロイド粒子間の回転運動相関を探ることにあった。少数の系は理論モデル等も構築しやすく、更に複雑な高体積分率での振る舞いの理解において重要である。数値計算で検証する理由には二つの点、(1)単粒子のコロイドの回転運動を測定するのは従来の手法では難しいことと(2)コロイドを任意の配置に置き同時に三次元観察をすることが無理であったが挙げられる。(1)は同研究者が担当した他課題で解決されたが、(2)は光ピンセット技術の前進を要した。
通常光ピンセット等コロイドの単粒子操作を行う場合、同じ光学系を用いて観察も行う。そのため共焦点顕微鏡観察のため焦点面を光学軸上移動させると光ポテンシャルも移動してしまう。よって数値計算のように少数のコロイドの並進移動を抑え、三次元においての回転運動を観察することは不可能であった。しかし今現在訪問しているオックスフォード大学のDullens研究室ではこの二つの光学系を完全に独立させることに成功した。よって上記にある数値計算と同じ環境下本物の実験データを得ることが可能となった。共同研究によりこの装置に最適な観察セルとコロイドの開発を終え、今は実験を実行する段階に到達している。本物の流体中の実験から得られる知見は大変貴重であり、この新しい進展を上記と合わせて進捗状況を「おおむね順調」と自己評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
三次元において自由にコロイドを配置して回転相関を探ることが実験・数値計算双方で可能となった今、あらゆる配置と系に応用する。まずは二粒子系で粒子間距離と相関の依存性を探る。次に一列に並ぶコロイドにおいての相関の緩和モード分布を探る。並進運動間で見られる流体力学的相互作用は先行研究においてバクテリアの鞭毛の動的挙動と関係があるとされてきたが、回転運動の相関は未だ探られていない。モード分布は列の長さ・コロイドの数に依存することが予想される。
次に結晶形態の安定性を探る。結晶内部でのコロイド間の回転運動相関の測定は例がなく、形態の流れ中の安定性や形成過程ダイナミクスとの関連性等が注目される。まずは二次元系において六角と四角格子の結晶においての相関を探る。特に第二配位殻においての回転運動が最近接粒子の運動とどのような関係があるかを検証する。局所安定構造である五角形の輪等も探る必要がある。非対称な配置での相関は互いに阻害しあうため回転運動そのものが大きく減少・抑制されることも予想される。コロイド表面間の距離、数等のみでなく純粋に配置に起因する回転ダイナミクスの抑制はガラス化と密接な関係があるかもしれない。更には三次元系においてあらゆる結晶形態の単位胞を形成して回転相関を探る。
この系は他の実験にも幅広く応用が可能であり、回転相関のみにこだわらず他の可能性も探る。一例としてコロイドの回転自由度の剪断力応答が挙げられる。従来の蛍光プローブでは流体速度測定等に用いられているが、局所的な速度勾配を単粒子で測定することはできない。つまり回転が見えるコロイドは「世界最小の剪断流プローブ」と捉えることができる。これを用い粘弾性応答測定、ミクロ流路中の回転運動測定等も視野に置いてある。将来的には外場に応答して回転を励起できる系の開発も試みたい。
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Research Products
(3 results)