2017 Fiscal Year Annual Research Report
現代中東における宗教対立とその抑止政策:イスラーム連帯が持つ平和創出機能の研究
Project/Area Number |
16J06871
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
池端 蕗子 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
|
Keywords | イスラーム協力機構 / 宗派対立 / 宗教間対話 / イスラーム首脳会議 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、国際政治機構OIC(イスラーム協力機構)に着目し、イスラーム世界、特に現代中東における宗教的イデオロギーの対立と和合の実態を解明することである。 昨年度はOIC加盟国の一つヨルダンに着目し、主にヨルダン王族による宗派和合・宗教間対話に関するイニシアティブがOICの場においてどのように発露され、承認され、コンセンサスが形成につながってきたかについて明らかにしてきた。 本年度は、OIC設立の直接の契機でもあり、常に加盟国間で一定のコンセンサスが形成され続けてきたエルサレム問題に関して着目した。エルサレム問題には、隣国ヨルダンも大いに関与し続けているため、ヨルダン王族の国内外での発話、OICの場におけるヨルダンのエルサレム問題関与の在り方等について、首脳会議や外相会議における決議や、OICジャーナルから分析を行った。その結果、ヨルダンは国内におけるキリスト教マイノリティとの友好関係を基礎とし、エルサレム問題においてもエルサレムのキリスト教勢力との共闘姿勢形成を目指し、それをアピールしていることが明らかになった。また、決議の内容やヨルダンの王族や首相とOIC事務総長との会談などからは、こうしたヨルダンの宗教戦略がOICから一定の承認を受けていることも明らかになった。 また、本年度はOICそのものの位置づけについても精査を行うことができた。具体的には、OICのように独立した諸国家が集合体をなして協力体制を敷くという地域統合システムが、汎イスラーム主義などのイスラーム政治思想においてどのように位置づけられてきたかを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はほぼ当初の計画通り研究を進め、その研究成果の発表を積極的に行った。昨年度行った研究内容であるヨルダン王族の宗教間対話イニシアティブに関する成果の一部を英語論文の形にまとめ、学術雑誌Mediterranean Reviewに投稿し、掲載された。国内での研究成果の発信としては、日本中東学会年次大会(5月)にてOICの研究史上の位置づけ、そしてイスラーム政治思想における位置づけについて口頭発表を行った。またイギリス・エディンバラ大学で開催された英国中東学会(7月)にも参加して英語発表を行い、有益なフィードバックが得られた。このフィードバックを活かし、マレーシア国民大学で開催された国際会議(8月)での英語発表に繋げることができた。今年度後期には、アジア経済研究所図書館においてOICに関する現地新聞の収集を行い、OICとエルサレム問題に関する記述の整理を行うことができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後はOIC加盟国間でのコンセンサス形成が比較的形成されやすい傾向にあると考えられる、イスラモフォビアの問題や過激派問題に関して、OIC首脳会議や外相会議の決議やOICジャーナル等から分析を行う。また、OICの附属組織、特別組織の内、特に宗派・宗教間の問題に関し活動を行っている、イスラーム歴史芸術文化研究センター(IRCICA)やイスラーム教育科学文化機関(ISESCO)のについて、出版物等からその理念や活動内容を分析する。 そしてこれまでの成果を元に、博士論文の執筆を行う。
|