2017 Fiscal Year Annual Research Report
一般化された距離二乗写像を要とした特異点論の展開と発展
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16J06911
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
一木 俊助 横浜国立大学, 環境情報学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 横断性定理 / ジェネリックな写像 / 安定写像 / マザー理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主目的は,2013年度に研究代表者が定義した「一般化された距離二乗写像」という写像の安定性を調べる事であったが,2016年度に進展があり,より一般的な形で大きく2つの発展的な成果を得た.それらの成果は研究論文にまとめ,2017年度にProceedings of the American Mathematical Society誌とJournal of the Mathematical Society of Japan誌にそれぞれ受理された. また2017年度は,大域的特異点論において古くから知られる「The basic transversality result」とよばれる横断性に関する基本的道具の改良を行った.具体的には以下である.大域的特異点論の本質的な道具の一つとして「横断性定理」という道具があり,カタストロフ理論でも有名なルネ・トム(1923-2002)の「トムの横断性定理」を始め,様々な研究者によって便利で強力な横断性定理が開発されている.その中でも,写像や空間等を限定しない一般的な形の「The basic transversality result」という道具は様々な特化された状況における横断性定理を導く際の補題となる.ジョン・マザー(1942-2017)は「J. N. Mather, Generic projections, Annals of Mathematics, 98, pp. 226-245, 1973.」にて,「The basic transversality result」の仮定を緩めた主張を導いたが, 2017年度に研究代表者はその仮定を更に緩め,これ以上仮定を緩められない(すなわち,仮定と結論が必要十分になる)ところまで拡張した.また,マザーの結果は何回でも微分可能な場合の結果であったが,本結果は微分可能性を緩めたより汎用的な結果となっている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一般化された距離二乗写像という特別な2次の多項式写像の研究に始まり,その研究が一段落した2017年度は,大域的特異点論における古くからの基本的道具でもある「The basic transversality result」という結果を,その仮定と結論が必要十分になるところまで拡張した結果を導いた.本結果は現在査読付きジャーナルへ投稿中である.
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Strategy for Future Research Activity |
安定写像の研究の第一人者とも言えるジョン・マザーは,現在においても安定写像の研究の土台となる「マザー理論」を構築したが,その理論は全て固有写像という比較的扱い易い写像に限定した理論であった.研究代表者の2016年度及び2017年度に行った一般化された距離二乗写像の安定性や,そのより汎用的な写像の安定性に関する結果も,マザー理論に立脚している為固有という条件が課されている. そこで今後,研究代表者は,任意の写像に適応可能な安定写像の理論, すなわち「マザー理論」の一般化を研究目標の柱とする.それを実現するために,「安定写像の完全な特徴付け」と,「定義域がコンパクトと仮定されていない一般の場合における, 写像空間内の安定写像の稠密性問題(すなわち,一般の構造安定性問題)」に関する2つの研究課題を行う.
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