2016 Fiscal Year Annual Research Report
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16J06983
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
相場 大樹 一橋大学, 大学院経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | Dollarization / ドル化 / Foreign Currency / Household Survey / Capital structure |
Outline of Annual Research Achievements |
カンボジアの家計の分野では、家計の外貨借り入れの決定要因について、カンボジアの家計部門の個票データを用いてカンボジアの研究者と共同研究を行った。その研究結果はJICA研究所のWorking Paperシリーズで発表した(Aiba, Daiju, Ken Odajima, & Khou Vouthy.2017)。この論文は、初めてカンボジアの家計を対象に、借入時の通貨選択に影響する要因を実証的に明らかにした論文である。特に、リスクヘッジ行動がカンボジアの家計では外貨選択の要因として大きく影響しており、他国での家計の外貨借り入れ行動と異なることを明らかにしている。なお現在、同論文の国際的な学術雑誌への投稿を準備している。 カンボジアの企業の分野では、一橋大学の奥田英信教授と共同研究を実施した。その成果は国際学会であるEast Asian Economic Associationにて口頭で発表を行った。(Okuda, Hidenobu, & Aiba Daiju, 2016)。また、同論文の日本語版を一橋大学経済学研究科のWorking paperとして発表した。(奥田英信, & 相場大樹. 2016.)本論文では、カンボジアの企業の個票データを用いて、ドル化した経済での企業の資本構成の決定要因を推計したものであり、カンボジアの企業は経済のドル化により、外貨建ての収入の比率も企業の資本構成に影響していることを明らかにした。。現在、国際学会でのコメントをもとに改訂中であり、国際的な学術雑誌への投稿を準備している。 さらに企業部門のドル化ついては、実証的にどのような企業でドル化が進行しているかをカンボジアの現地中央銀行の研究者とも共同で研究を行い、その成果を一橋大学経済学部の大学紀要で発表した。(Aiba, Daiju, & Ranareth Tha.2017)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
家計部門の研究についてはおおむね予定通りに進行しており、データの整理を行い、計量モデルを用いて分析を行った。その結果をJICA研究所小田島健研究員とカンボジア中央銀行Vouthy Khou研究員と論文としてまとめ、JICA研究所のワーキングペーパーとして発表した。ワーキングペーパーとして公表した論文については、その論文を読んだ近い分野の研究者からメールでコメントを何点かもらうことができた。現在、学術雑誌の投稿のため、改訂と英文校正を行っている。 また、企業についての研究も当初の予定通りに進行しており、平成28年度は一橋大学の奥田英信教授とデータを用いて実証的な分析を行った。そして、その結果を国際学会で発表し、討論者や参加者から多くのコメントをもらうことができた。そこでのコメントをもとに現在論文を改訂途中である。 また、企業部門については、さらにカンボジア中央銀行Rannareth Tha研究員とともにドル化と企業行動の関係の実証研究を行った。この研究の結果は論文としてまとめ、平成28年10月20日にプノンペンでカンボジア中央銀行主催のセミナーで発表した。また、一橋経済学という雑誌でも発表した。 銀行部門についての研究は、支店レベルのデータを用いての実証研究をカンボジア中央銀行Pangna Sok研究員とともに実証分析を行った。この研究もプノンペンのセミナーで成果を発表し、一橋経済学でも発表している。 平成28年10月にカンボジア現地を訪問した際にカンボジア現地中央銀行とマイクロファイナンス協会からデータを提供の協力してもらった。収集したデータについては一部媒体であったことやデータの整理が必要であったため、研究補助を2人雇用し、データ入力と整理の作業を行った。 また、平成28年10月に現地を訪れ、企業や銀行の経営者にインタビューを行った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に行った研究について、家計と企業について執筆した論文2本をそれぞれ英語校正を行った後に国際学術雑誌に投稿する。 また、平成28年度に行った企業や銀行経営者へのインタビューを通して得た情報に基づいて、計量モデルでの追加的な分析を試みる。その成果について別の論文としてまとめる予定である。 また、企業部門と銀行部門について、平成28年度に一橋経済学で発表したカンボジア中央銀行研究員Rannareth ThaとPagna Sokとのドル化の研究を、データを最新のものに更新して、経年変化について分析し、企業と銀行でそれぞれ2本の論文を執筆する予定である。その結果の発表もまだ未定であるが、カンボジア現地中央銀行の主催のセミナーで発表を行うことを計画している。 平成28年度にデータ入力と整理を行った銀行・マイクロファイナンス機関のデータを利用し、まだ分析されていないマイクロファイナンス機関のドル化の現状について明らかにする分析を行う。その結果についても新たな論文としてまとめ、平成29年度に国内学会と国際学会での発表を目標とする。また、統計的なモデルを用いての分析を行うので、統計ソフトウェアを追加的に購入することを検討している。 平成28年度と同様にカンボジア中央銀行とカンボジアマイクロファイナンス協会からデータの提供を依頼する。データが入手できた場合に、平成28年度と同様にデータの整理と入力の作業が必要になってくるため、研究補助を2人雇用することを検討している。 また、平成28年度と同様にカンボジア現地を訪問し現地の家計、企業、銀行の経営者へのインタビューを行い、ドル化の現状を調査することを予定している。
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