2016 Fiscal Year Annual Research Report
植物の窒素同化に関わる硝酸・亜硝酸イオン輸送体の構造・機能解析
Project/Area Number |
16J07199
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
福田 昌弘 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | X線結晶構造解析 / 硝酸輸送体 / 植物 / 窒素同化 / 硝酸イオン / 構造生物学 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物は主に硝酸イオンを窒素源として取り込み、亜硝酸イオンを経てアンモニウムイオンにまで還元することでアミノ酸合成などを行う(窒素同化)。本研究は、高等植物の窒素同化の第一段階である硝酸態窒素の取り込みを担う2種類の高親和性輸送体(硝酸イオン輸送体NRT2、亜硝酸イオン輸送体HPP)のX線結晶構造解析および生化学解析を通して、いまだ多くの謎に包まれている植物による窒素同化の分子機構を解明することが目的である。 植物のNRT2は根の細胞膜などに発現しており、硝酸イオンの取り込みに中心的な役割を果たす。単量体で働く細菌の硝酸輸送体に対して、植物のNRT2はNAR2と呼ばれるアクセサリータンパク質と2:2ヘテロ四量体を形成することで高い輸送活性を示すことが報告されている。しかし、その構造およびアクセサリータンパク質による輸送制御機構は謎に包まれている。本研究では、NRT2-NAR2複合体の構造・機能解析を通して、他のMFS輸送体には見られない2:2ヘテロ四量体構造がもたらす植物独自のNO3-取り込み機構を原子レベルで解明することを目的とした。具体的には、植物の硝酸輸送体NRT2およびアクセサリータンパク質NAR2をcDNAからクローニングし、昆虫細胞を用いて共発現させ、網羅的にスクリーニングを行った。その結果、数種のNRT2をNAR2との複合体状態で高純度に精製することに成功した。今後はさらに精製条件の検討を行った上で、X線結晶構造解析あるいはクライオ電子顕微鏡を用いての単粒子解析を目指す。 HPPは植物の葉緑体膜上に発現している亜硝酸輸送体であり、植物の細胞質中にて硝酸イオンから還元されて生じた亜硝酸イオンをさらなる窒素同化のために葉緑体内へ取り込む重要な役割を果たしている。さまざまな植物由来のHPPを酵母にて発現させたが、タンパク質の安定性が低く、さらに検討が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NRT2-NAR2に関しては、複合体の状態での精製に成功した。一方、HPPに関しては酵母にて発現は見られたものの、タンパク質の安定性が低くさらなる条件検討が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
NRT2-NAR2に関しては、さらに発現、精製条件を検討した上で、X線結晶構造解析あるいはクライオ電子顕微鏡を用いての単粒子解析を目指す。一方、HPPに関しては、発現ホストの変更も含めた発現条件の検討を続けていく。
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