2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16J07285
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
北村 洋樹 東京工業大学, 大学院総合理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 焼却飛灰 / 重金属不溶化 / 鉱物誘導 / 土壌還元 |
Outline of Annual Research Achievements |
都市ごみ焼却飛灰の性状は、都市ごみの成分や焼却施設の運転条件などに依存しており、飛灰中に含有する有害重金属の溶出挙動へ影響を及ぼしている。しかし、焼却飛灰は複雑な鉱物特性を有するだけでなく、アモルファス相や微量重金属などを含有するため、詳細な性状分析が必要不可欠である。2016年度の研究では、焼却飛灰中の重金属化学形態の分析、焼却飛灰の粒子内・粒子間の不均一性評価を行った。 重金属化学形態の分析では、走査型電子顕微鏡(SEM)で飛灰粒子の形状を観察するとともに、エネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX)の元素マッピングにより、重金属濃集部の元素分布を調査した。ラインプロファイル解析では、重金属濃集部における構成元素の相対強度を測定した。しかし、飛灰粒子表面は塩化カリウム/塩化ナトリウムなどが被覆しており、重金属濃集部の検出が困難であった。そこで、逐次抽出処理によりマトリクスを段階的に溶出し、内部マトリクス中の重金属濃集部の測定も併せて行った。得られた相対強度の結果から、重金属と他の構成元素の相関関係を明らかにすることにより、X線回折法(XRD)では検出困難であった微量の重金属化学形態を推定することが可能となった。一部の鉄系鉱物やチタン系鉱物にはクロムや亜鉛などの重金属濃集が確認されたが、鉱物学的不溶化効果は限定的なものに留まると考えられる。 飛灰粒子の不均一性評価では、SEM-EDXを用いて飛灰粒子を1粒子ずつ個別に分析した。粒子内の不均一性評価では、ラインプロファイル解析によって得られた相対強度から変動係数を算出し、不均一性評価の指標とした。粒子間の不均一性評価では、観察粒子表面の元素濃度からヒストグラムを作成し、不均一性を評価した。飛灰粒子は粒子内・粒子間ともに不均一な特性を有しており、重金属の溶出挙動へ影響を及ぼしている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最終目的は、「重金属の鉱物学的不溶化技術の開発」および「焼却飛灰の早期土壌還元方法の確立」である。焼却飛灰中の重金属化学形態分析の結果、重金属を自身の結晶構造内部へ取り込む性質を有する鉱物への重金属濃集化は、当初の予想に反して極めて低いことを見出した。しかし、重金属濃集化は飛灰粒子内のアルミニウム/カルシウム/ケイ素を主体とする内部マトリクスとの相関が高いことを見出しており、「重金属の鉱物学的不溶化技術の開発」に向けて有用な知見を得た。また、2016年度の研究成果は、国内学会3件、国際会議5件において成果発表を行っている。以上の理由から、本研究は概ね計画通りに進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、研究機関の分析部門が管理している共通機器(走査型電子顕微鏡およびエネルギー分散型X線分析装置)を主に使用しているが、経年劣化に伴う装置の故障が頻発しているため、分析に遅れが生じることが懸念される。そこで、今後の研究方針としては、粒子内・粒子間の不均一性が重金属の溶出挙動へ与える影響を定量的に評価するため、地球化学的モデリングなどの手法を用いて影響因子の検討を行う予定である。影響因子の解明後、その結果を踏まえて、アルミニウム/カルシウム/ケイ素をベースとする無機系薬剤処理による「重金属不溶化技術の開発」および「早期土壌還元方法の確立」を目指す。
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