2017 Fiscal Year Annual Research Report
Multi-zone sound field reproduction based on High-Order Ambisonics
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16J07287
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
清水 拓 東北大学, 情報科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 音空間共有型球面波音場合成法 / 移動作用素 / 高次アンビソニックス / 球面音響 / 音空間共有型音場合成法 |
Outline of Annual Research Achievements |
はじめに,今年度は前年度に提案した音空間共有型球面波音場合成法について,音場再現精度の安定化を試みる前により詳細な性能評価を行った.具体的には音源の周波数や音源位置に対する再現精度の影響について調査した.その結果,周波数の変化に対して再現精度が大きく変化しないこと,および,音源位置が聴取領域周囲と原点位置のときと,音源と複数の領域が直線上に並ぶときに再現精度が悪化することが判明した.また,上述の成果を国際学会(24th International Congress on Sound and Vibration, ICSAV24)で報告した. 次に,安定性の改善について取り組み,特に,音源と領域が直線に並ぶときに生じる精度悪化に注力した.しかし,その対応策の考案には至らなかった.前年度の予想では,領域と音源が直線状に並ぶと,スピーカ信号を求めるための逆問題が悪条件となり精度が悪化すると考えた.そのため,特異値分解による特異値打ち切りやティホノフ正則化などの処置によって改善すると予測したが,上述二つの手法による改善は見られなかった.この結果から,この精度低下は高次アンビソニックスを利用する上での原理的な問題と推測される. 加えて,その後,再現精度 が悪化 する可能性 のある新たな条件 が発覚した.具体的には,実環境での利用時に,原点上の水平面以外に指定した聴取位置の音場に大きな誤差が生じる恐れがあった.この問題は聴取位置によらず再現精度が安定するという提案法の利点を著しく損なうものである.そこで,提案法を構成する2つの処理のうち,移動作用素の修正を試みた.提案した移動作用素を音源距離に関する作用素と音源方向に関する作用素に分割し,後者の作用素を変更することで問題に対応した.現在は,修正した音空間共有型音場合成法の提案とその性能評価の結果について,外部公表を準備している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,複数人が同時利用可能な音場再現システムの実現を目的としている.これを実現するために,音場の収音部分と再現部分とに研究を分けて考え,主として再現部分に取り組んでいる. 再現部分の進捗状況は,上述のように,昨年度に提案した音空間共有型音場合成法について,再現精度か悪化する条件が新たに発覚した.この問題の発覚が遅れた理由として,数値シミュレーション上では再現精度が大きく劣化するなどの現象が見られなかったためである.しかし,この不具合によって,実環境での利用時にシステムが不安定になると予想され,提案法の修正に着手する必要があった.結果として,提案法の修正は達成でき,数値シミュレーションによる再評価も実施した. また,再現精度の安定化,特に,音源と複数の領域とが直線状に並んだ時,再現精度が悪化するのを防ぐという目標には達成には至らなかった.一般に,逆問題の安定化には,特異値打ち切りやティホノフ正則化が用いられる.これは逆問題が悪条件になるためにおこるシステムの不安定化を抑制する手法である.しかし,今回の場合にはそれは適用することができなかった.これは,おそらく,高次アンビソニックスを複数領域手法に用いることに起因する根本的な問題である.したがって,この問題を対処するためには軽微な修正だけではなく,抜本的な修正を施す必要があると推察される.本研究では,提案システムの実世界での実現を目標としているので,この問題は次年度以降の目標とし,実環境を想定した提案法の性能評価に取り組むべきと考えに至った.上述のように,再現部分の研究はシステムの定式化および数値シミュレーションでの評価が終了した段階にある.
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Strategy for Future Research Activity |
上述の提案法では音場を再現するために,音源の位置情報が必要とする.そのため,マイクアレイで収音した音響信号から音源位置を推定することが,構想している,複数対応高臨場感音響通信の収音部分に要求される機能と考えていた.しかし,前年度と本年度に実施した研究調査の結果,音源位置推定はすでに多くの研究成果があることが判明している.このことと新たな合成精度悪化の対応による時間経過を考慮して,再現部分の研究に注力することが本研究を高めるために有用であると判断する. そこで,来年度の予定として,再現した音場の計測と聴取実験を行う.現在,音場の再現は数値シミュレーションで実施している.しかし,実際の運用では,スピーカの特性や配置ずれといった多くの誤差要因を含む.そこで,提案法を実際のシステムで使用し,再現された音場の計測することで再現精度の評価を試みる.現在は,マイクロホンアレイを用いた音場の計測を予定している. また音場再現の研究領域では手法の提案といった技術的な発展は大きく取り組まれている.しかし,音場再現システムを使い,実際に音を聴いた時の心理的な影響といったものがほとんどされていない.そのため,システムが完成するまで性能を評価することが難しい.しかし,音場再現は一般的にシステム規模が大きくなるため,事前にある程度の精度予測できることが望ましい.そこで,シミュレーションによって得られる音場再現精度と聴取感覚の関係を調べる基礎的研究を実施する.予定では,音の広がり感や,音の定位感といった,空間情報に起因する聴取感覚を指標とする.
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Research Products
(1 results)