2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16J07348
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木伏 紅緒 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 筋電図 / 動作解析 / 特異値分解 / 非負値行列因子分解 / 運動制御 / 安定性 |
Outline of Annual Research Achievements |
柔軟な歩行を達成するには全身の関節や筋を協調させることが必要不可欠であるため、歩行における筋や関節の協調に着目してこれまで研究を進めてきた。筋や関節における協調を定量する手法として、筋における協調を示す筋シナジーと、関節における協調を示す運動学シナジーが用いられている。筋電図データから筋シナジーを抽出することによって、荷重応答、地面の蹴りだし、遊脚の加減速といった、歩行タスクと関連した、いくつかの筋どうしの同期的な活動パターンが定量される。また、同期的に駆動する関節の組とその活動パターンも運動学シナジーとして、関節角度データから抽出されている今年度は、筋シナジーおよび運動学シナジーの活動パターンの特性を検証した。 まず、歩行速度に依存した筋シナジーの活動パターンの変化を検証し、筋シナジーの活動パターンにおける活動中心は、歩行速度の変化に伴いシフトすることを明らかにした。この研究成果は、国際誌に掲載された。次に、歩行速度に依存した筋シナジーの活動度における発散性と周期性の変化を検証し、筋シナジーの活動度における発散性は歩行速度の上昇に伴い増加するが、周期性は安定的に保たれることが明らかとなった。この研究成果に関して、国際会議において口頭発表を行い、国際誌に投稿した。また、この解析手法を応用し、高齢者と若齢者の歩行の安定性を、最大リアプノフ指数に基づき比較した。この研究成果は、国内雑誌の特集にて発表された。最後に、非最適な歩行における運動学シナジーの時間パターンにおける発散性を検証し、著しい小股と高速度帯において時間パターンの発散性が高いことが明らかとなった。この研究成果に関して国内会議にて口頭発表を行い、若手奨励最優秀賞を受賞した。また、平成30年度の国際会議でも口頭発表を行う予定であり(採択済)、その国際会議におけるStudent travel awardを受賞した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の始めに、非最適な歩行における運動学シナジーの時間パターンにおける安定性に関する実験を行い、その研究成果は、平成30年度に国際学会(The XXII Congress of the International Society of Electrophysiology and Kinesiology)にて報告される予定である。また筋シナジーの活動パターンにおける発散性に関する研究成果も国際誌に投稿された。 平成29年度は、歩行速度に依存した筋シナジーの活動パターンの変化に関する研究成果を国際誌にて発表することと、非最適な歩行における運動学シナジーの時間パターンにおける安定性に関する研究成果を学会にて報告することを目指していた。この2点について達成されたため、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでは安定的な歩行動作を対象としていたが、歩行の柔軟な制御を明らかにするためには、不安定な歩行を安定化させる過程で関節の協調的な動作にどのような変化が生じるのかを検証する必要がある。そこで平成30年度は新たな実験を実施し、歩行を安定化させる過程を検証する。これまでは様々な歩行速度や、ストライド長・ストライド時間の組み合わせでの歩行を検証してきたが、歩行は高度に柔軟な動作であるため、著しい高速度や大股の歩行には比較的速やかに適応し、安定的な歩行を出力することができる。このようにすぐに適応できる課題を用いるのではなく、適応するのに努力が必要な歩行課題を用い、その課題に適応していく過程を調べることで、不安定な歩行を安定化していく過程を明らかにできると考えた。具体的には、幅5cmのスラックラインというヒモの上を、綱渡りのように歩行してもらい、スラックライン上での歩行に適応する過程を検証する。今年度はこの、高度に不安定な歩行路への適応過程に関する実験を行い、解析結果に関する学会発表、および論文投稿を目指す。 また、これまでの研究のまとめとして、平成29年度に学会発表を行った、歩行速度に依存した筋シナジーの活動度における発散性と周期性の変化に関する研究と、非最適な歩行における運動学シナジーの時間パターンにおける発散性に関する研究を平成30年度は国際誌に投稿する。
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