2016 Fiscal Year Annual Research Report
衛星と惑星の相互作用によって生じる地形に着目した火星衛星系の起源と表層進化史
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16J07415
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| Research Institution | The University of Tokyo |
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Principal Investigator |
菊地 紘 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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| Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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| Keywords | フォボスの線状構造 / 衛星表面の重力場 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
本研究は課題(1)フォボスでみられる線状構造の形成、(2)火星の衛星の地質学的な対応関係の調査、(3)火星衛星の起源と進化、に関する研究を行っている。
課題(1)に関して、フォボスの線状構造を主成分分析や混合ガウス分布を用いた統計解析により定量化を確立した。これにより、線状構造が火星にかつて存在していた環との衝突によって形成したとする仮説を提唱し、それらの分布を矛盾なく説明できることをN体の数値計算と明らかにした。これらの成果は学会で発表し、博士論文としてまとめた。
課題(2)に関して、まずフォボスとディモスの形状モデルと、それらの遠心力と火星の潮汐力から衛星の表面における詳細な重力場を計算した。次に近年の疑似カラー画像を用いて二つの衛星でみられるBlue unitと呼ばれる地域を明確に区分した。この地域における重力勾配との関係を調査したところ、全域的にはみられなかった相関があることを見出した。これらの成果は学会で発表した。
課題(3)に関して、課題(2)より二つの衛星の内部は同じ物質で構成している可能性を示した。一方で、クレーターの放出物が再堆積する地域にも注目している。クレーターの放出物に関する予備的な数値計算を実行したところ、火星の潮汐力による軌道の減衰の効果が小さい時期に、巨大なクレーターが形成された可能性が示された。以上の解析は、フォボスはこれまで考えられていた従来の表層年代の推定に比べて若いということを示唆している。この結果は火星衛星の表層を理解するだけでなく、それらの起源を制約する上でも重要な研究となるため、次年度に詳細な計算を実行する予定である。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
火星の衛星フォボスでみられる線状構造に関して、統計解析を用いて定量的に分類し、新しい仮説を提唱していた。本年度はこの仮説に対して、詳細な数値計算によって起源を制約し、線状構造の分布を調和的に説明することができたことは本年度の大きな進展であった。この成果は国内外の学会で発表した。さらに、5つに分類された線状構造が火星の一つの環で説明できることを提示することができたことは思いがけない発見であった。これは国際学会で発表予定であり、2年目に国際誌に投稿予定である。
フォボスともう一つの火星の衛星ディモスの起源の解明のカギとなるBlue unitと呼ばれる地域に着目し、数値形状モデルや火星の重力を加味した重力場を計算することで、新しい相関がみられた。さらに、その地域のクレーターをカウンティングすることで、比較的若いという結論を見出した。この成果は国内の学会で発表した。これも2年目に投稿予定である。
よって、掲げた課題に対して順調に進んでいると判断した。
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| Strategy for Future Research Activity |
フォボスの線状構造の起源を特定することは、フォボスの表層進化を理解する鍵となるだけでなく、火星衛星の起源や火星系の新しい進化史を紐解くことに繋がる可能性がある。現在その起源の候補として、火星以外の可能性が大きいことがわかってきたが、その形状の解析と数値計算を用いて線状構造を形成した衝突体の起源をさらに制約したいと考えている。
フォボスなどの歪な小天体のクレーターの直径を計測する際、自動抽出したあと歪な形状を楕円近似でクレーターの直径を計測している。そのため、クレーターの大きさが正確でないことがわかり、大きな不定性を与えていることがわかった。そこで、今後は三次元形状モデル上で直接クレーターをカウンティングしたいと考えている。
天体表面にはフォボス以外にも様々な線状構造が存在しているが、フォボスの線状構造の計測で確立した解析手法を応用し、定量的に分類したいと考えている。
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Research Products
(7 results)
