2016 Fiscal Year Annual Research Report
東南アジア熱帯雨林における種子食性昆虫群集の長期動態と多様性の解明
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16J08043
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
浅野 郁 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 種子食性昆虫 / フタバガキ科 / 一斉開花 / マスティング / ボルネオ島 / ゾウムシ / キクイムシ / DNAバーコーディング |
Outline of Annual Research Achievements |
植物の種子を餌資源としている昆虫(種子食性昆虫)による種子捕食は、植物の種子の成熟・散布・生存へ与える影響を通じて、植物の世代更新に大きな影響を与えている。そのため、種子食性昆虫の群集動態やそれら各種の食性幅といった基礎的な生態情報を解明することは、森林を構成する植物群集の多様性や群集動態の理解にとって必要不可欠である。 東南アジアの低地熱帯雨林では、数年に一度の不規則な間隔で、様々な科に属する植物が同調して繁殖を行う現象が観察される(一斉結実)。当地域で優占しているフタバガキ科樹種の大半は、一斉結実期にのみ繁殖を行うが、それらの種子の多くはゾウムシ、キクイムシ、小蛾類などの種子食性昆虫によって捕食されることが知られている。しかし、これらの昆虫類に関する生態はほとんど明らかになっていない。また、フタバガキ科以外の植物の種子を捕食する昆虫群集に関する研究は皆無に近い。 本年度は、ランビルヒルズ国立公園、クバ国立公園、グヌン・ガディン国立公園の計3ヶ所(全てマレーシア・サラワク州)で合計5ヶ月間の野外調査を行い、様々な科に属する、一斉結実とは関係なく繁殖する植物(非一斉結実型植物)の種子から複数の種子食性昆虫を採集した。現在、今年度の野外調査と過去の一斉結実期に実施した野外調査で採集した種子食性昆虫標本を、DNAバーコーディング(DNA情報に基づいた昆虫の種同定方法)技術を用いて種同定し、データ解析を進めている。 フタバガキ科の種子を餌資源としている昆虫間に見られる種子資源の利用様式の違いに関する研究成果を、2017年3月の日本生態学会東京大会で発表した。この内容は論文化し、国際的な学術雑誌に投稿する準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた調査地であるランビルヒルズ国立公園に加えて、クバ国立公園とグヌン・ガディン公園でも野外調査を実施することができ、目的であったフタバガキ科樹種以外の種子を捕食していた種子食性昆虫を複数種得られた。また、一斉結実期にフタバガキ科の種子から得られたキクイムシの一部はDNAバーコーディング技術を用いて種同定することが出来た。しかし、当初の予定よりも野外調査が長引いたことから、得られた昆虫の種同定を行う期間が短くなり、ゾウムシ類に関しては種同定が終わらなかった。本年度は野外調査による種子食性昆虫の採集が順調に進んだことから、次年度はゾウムシ類を中心に得られた昆虫の種同定に時間を費やすことができると考えられる。 以上より、研究計画に一部の変更があったものの、おおむね順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで研究がおおむね順調に進展していることから、今後も当初の計画通りに研究を推進する。 野外調査の期間は本年度よりも少なくし、これまでに得られている種子食性昆虫の種同定を進める。これまでのデータと合わせて解析を進め、得られた結果を国際的な学術雑誌へ投稿するとともに、学会発表も行う。
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Research Products
(2 results)