2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16J08096
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
谷 義隆 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | イオンエンジン / ECR / プラズマ / 電気推進 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は小惑星探査機「はやぶさ」および「はやぶさ2」に搭載されたマイクロ波放電式イオンエンジンの中和器を対象に大電流化を行っている.これまでの研究進度を鑑みて,昨年度より研究対象をマイクロ波放電式イオンエンジン全体に拡大した.本研究が対象としているイオンエンジンは2024年のソーラー電力セイルによる木星トロヤ群探査ミッションへの適用が検討されており,イオンエンジン全体の性能向上が急務となっているためである.現在は中和器と対になる装置であるイオン源の大電流化を行っている.ミッションへの適用には,従来から20%程度の性能向上が求められている.昨年度は従来とは異なる磁場形状をもつ新型の放電室を設計し,性能試験を実施した.その結果,要求性能の200mA級のイオンビーム電流を実現した.この放電室に対して引出電極下流でのビーム密度分布を計測したところ,磁場形状の変化に伴い分布が引出電極外周方向へと広がっていることが確認された.この結果から,放電室内外周部でもプラズマ生成が行われるようになったと考えられ,性能向上は放電室内部のプラズマのマイクロ波吸収効率が増大したことに起因するものと考えられる.以上の結果から,磁場形状変更がマイクロ波放電式イオンエンジンの効率を向上させる上で重要なパラメーターであることを実験的に突き止めた.今後は性能向上の原因を,プローブを用いた内部診断により明らかにし,大電流低温ECRプラズマ源の設計指針を模索する計画である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電子と比較してイオンは引き出しづらいため,イオン源の性能向上は困難だと思われていたが,目的としていた200mA級のイオンビームの引き出しに成功し,中和器・イオン源ともに大電流化を達成できた.今後は現象を明らかにするためにパラメーターを変更しての内部測定と,その結果からイオンエンジンの設計指針を明らかにする必要がある.内部測定にはすでに着手しており,計測にも成功している.残すはパラメーター変更後の測定のみである.
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Strategy for Future Research Activity |
性能取得結果から,イオン源の放電室長さに性能感度があることが判明している.性能が変化する原因としてはマイクロ波吸収効率とイオン引き出し効率の変化が考えられる.吸収効率の直接計測は困難であり,新たな手法の確立が必要となるため,引き出し効率を計測して見積もる.これらの結果から,マイクロ波型イオンスラスタの設計指針を提案する.
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Research Products
(3 results)