2016 Fiscal Year Annual Research Report
日本の政治領域における性的マイノリティの包摂と排除のメカニズム
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16J08328
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
福永 玄弥 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | ジェンダー / セクシュアリティ / フェミニズム / クィア理論 / 東アジア / 台湾 / LGBT / 女性運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、性的マイノリティの制度への包摂という点において日本よりも先行ポジションにある台湾の事例を中心に研究し、その成果を論文や学会で発表した(下記(1)-(4))。総じて言えば、台湾で性的マイノリティの制度への包摂を推進した要因は以下の2点である。(a)1990年代以降の民主化が多文化主義を帰結し、「マイノリティの承認」が社会統合の理念として受容されたこと。(b)「半・国民国家」としての周縁化されたポジションが国際社会において新しい人権イシューとして注目された「LGBT」への関心を推進したこと。ただし(1)-(4)で論じたように、制度における包摂は各領域における多様に異なるポリティクスの結果でもあることが明らかになった。 (1)台湾の徴兵制におけるゲイ男性の排除から包摂への政策転換について論文を投稿した(『Gender and Sexuality』第12号掲載予定)。 (2)台湾における立法をつうじたLGBTの包摂について、2004年に成立したジェンダー平等教育法を事例として、それが性的指向やジェンダー・アイデンティティに基づく差別を禁止するに至った草案起草の過程や立法の推進要因を研究した(『日本台湾学会報』第19号掲載予定)。 (3)台湾の政治領域における「ジェンダーとセクシュアリティの平等」を推進したアクターとして、社会運動の観点から女性運動と性的マイノリティ運動が連帯して展開された背景を研究した(瀬地山角編『ジェンダーとセクシュアリティで見る東アジア』勁草書房に掲載予定)。 (4)台湾が1990年代から2000年代にかけて「アジアでもっともLGBTフレンドリーな社会」へと発展を遂げた背景を研究した(瀬地山角編『ジェンダーとセクシュアリティで見る東アジア』勁草書房に掲載予定)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、性的マイノリティの制度への包摂という点で台湾の事例研究を目的としたが、当初の研究計画は順調に遂行できたと考える。とりわけ、「制度」を一様に把握するのではなく、徴兵制や立法など複数の事例研究を重ねたことにより、性的マイノリティの制度への包摂が各領域における多様なポリティクスの結果であることを明らかにできた点は、日本の事例を検討する上でも重要な示唆を含むと考えられる。また、これらの研究成果を論文や学会やシンポジウム等で発表できた点でも、現在までの達成度はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、性的マイノリティの制度への包摂という点で、引き続き台湾の取り組みと日本の事例を調査する。台湾に関しては、現在すべての直轄市で実施されている自治体の「同性パートナーシップ保障」条例と、今年度にも実現すると見られる同性パートナーシップ保障の立法の調査を実施する。日本に関しては、同性パートナーを婚姻に準ずる関係と定めた渋谷区の「男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例」を事例として、その制定をめぐるポリティクスを調査する。以上の調査を踏まえて、台湾と日本の事例を比較して考察をおこなう予定である。
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Research Products
(7 results)