2017 Fiscal Year Annual Research Report
日本の政治領域における性的マイノリティの包摂と排除のメカニズム
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16J08328
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
福永 玄弥 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | ジェンダー / セクシュアリティ / フェミニズム / クィア / 東アジア / 台湾 / LGBT / ナショナリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究実施状況は次の2点にまとめられる。第一に、前年度に引き続き、性的マイノリティの制度への包摂という点において日本よりも先行ポジションにある台湾の事例を調査し、その研究成果を論文や学会等で発表した。第二に、日本の事例について調査を実施し、次年度に論文として発表するべく準備を行った。詳細は次の通りである。 台湾における性的マイノリティの制度への包摂について、まず、瀬地山角編『ジェンダーとセクシュアリティで見る東アジア』(勁草書房)の中で論文を2本発表した(「『LGBTフレンドリーな台湾』の誕生」、「台湾におけるフェミニズム的性解放運動の展開:女性運動の主流化と、逸脱的セクシュアリティ主体の連帯」)。次に、学会誌に論文を2本投稿し、いずれも掲載された(「同性愛の包摂と排除をめぐるポリティクス:台湾の徴兵制を事例に」『Gender and Sexuality』12号所収、「性的少数者の制度への包摂をめぐるポリティクス:台湾のジェンダー平等教育法を事例に」『日本台湾学会報』19号所収)。さらに、雑誌やウェブジャーナルにも論考を発表した(「『LGBTフレンドリーな台湾』の誕生:包摂と排除をめぐる政治的背景」『世界』898号所収、「台湾で同性婚が成立の見通し:司法院大法官の憲法解釈を読む」『シノドス』掲載など)。 日本の事例として、2014年に成立した「渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例」に注目し、同性パートナーシップが制度化されるに至った政治的背景を調査した。現在も調査は継続しており、その成果は次年度に発表する予定である。 最後に、近年、日本と台湾におけるLGBT運動が積極的に連帯を形成してきた点に着目し、その政治的歴史的背景を考察した。その内容の一部はすでに中国で開催された国際学会で発表し、現在は台湾の学会誌に投稿するべく中国語で論文の執筆を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、性的マイノリティの制度への包摂という点で先行事例と考えられる台湾の事例について、前年度の調査結果を学会誌や学会発表や一般メディアで発表することができた。当初の研究計画は順調に遂行できたと考える。また、日本の事例についてもすでに調査に着手しており、次年度に学術誌や学会でその成果を発表する予定である。さらに、台湾と日本の事例研究を進める中で、東アジアにおける性政治の展開を批判的に検討するという新しい着想を得ることができた。この点についても次年度に論文として成果を発表する予定である。以上より、今年度の研究状況はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、性的マイノリティの制度への包摂という点で、主に日本の事例を調査する。とりわけ同性パートナーを婚姻に準ずる関係と定めた渋谷区の「男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例」を事例として、その制定をめぐるポリティクスを調査し、成果を発表する。また、次年度が最終年度に当たるため、台湾と日本の事例を比較した考察も行い、成果を発表する予定である。
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Research Products
(5 results)