2016 Fiscal Year Annual Research Report
糖尿病患者の肺機能障害発症リスク及び予防因子の解明:前向き研究
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16J08351
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
園田 奈央 大阪大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 糖尿病 / 肺機能 / 拘束性肺機能障害 / 人間ドック |
Outline of Annual Research Achievements |
倫理委員会の承認を得て糖尿病と肺機能との関連を評価する解析用データセットを作成した。 ①糖尿病者と非糖尿病者の肺活量の経年的低下速度の差の検討:2008年~2013年の5年間毎年人間ドックを受診した5580名を解析対象とした。現在喫煙の有無および性別で層化した結果、5年間の努力肺活量(FVC)の経年的低下速度は、現在非喫煙の男性では、非糖尿病者で-2.5ml、糖尿病者で-13.1mlであった。現在非喫煙の女性では、非糖尿病者で-3.8ml、糖尿病者で-11.1mlであった。また、現在喫煙の女性では非糖尿病者で3.3ml、糖尿病者で-6.9mlであり、いずれにおいても、糖尿病の者で肺活量の低下速度が速かった。現在喫煙者の男性においては非糖尿病者と糖尿病者とで大きな差は見られなかった。 ②糖尿病患者の肺機能障害発症リスク検討:1日及び2日人間ドックを受診した40-69歳の10553名のうち、選択基準に適合した7524名を解析対象とした。ベースライン時に糖尿病であった者は649名(8.6%)であった。肺機能の指標であるFVCは非糖尿病者で3533.6±9.6ml、糖尿病者で3509.4±27.4mlであった。同様に、一秒量は2843.8±7.8ml、2804.1±21.6ml、%肺活量は101.8±10.7%、99.1±10.3%、一秒率は0.81±0.05、0.80±0.05であった。拘束性肺機能障害の1000人年あたりの発症率は、非糖尿病者で4.7、糖尿病者で10.9と糖尿病者で高かった。閉塞性肺機能障害の1000人年あたりの発症率は、非糖尿病者で19.5、糖尿病者で25.1であった。交絡因子を調整したCOX回帰分析の結果、拘束性肺機能障害のリスクは非糖尿病者に比べ、糖尿病者では1.62倍有意に高かった。閉塞性肺機能障害のリスクは有意な上昇は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、倫理申請を行った。また当初の計画通り、データクリーニングなどを着実に行い長期間の解析用データセットを作成できた。 研究課題については、糖尿病患者と非糖尿病者の肺活量の低下量を比較した。 また、糖尿病が拘束性肺機能障害発症のリスクを上昇させることを明らかにでき、その結果を現在論文にまとめている。以上より、(2)とした。
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Strategy for Future Research Activity |
現在行っている解析に加えて、男女別の解析や年代別の解析を行っていく予定である。さらに、糖尿病者において腹部肥満の有無や喫煙状況等で組み合わせた解析を行い、その結果を学会等で発表する。 加えて、糖尿病患者の肺機能低下に関連する因子を探索的に検討する。特に、予防因子として運動(身体活動)に着眼する。継続的な運動の効果についても算出する予定である。
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